第七十九話 ダウンウィンドセール

スピンだジェネカーだと言いますが、もちろん、セールメーカーによって基本的な形状と性能があります。しかし、ここはもう少し柔軟に考えてもいいのではないかと思います。

セールメーカーにダウンウィンド用のセールを頼むとして、決まった形にしなければならないわけではありません。ちょっとあまり肩が張らない方が良い、ドラフトは浅く、或いは深く、そういう事を相談する事ができます。ですから、基本的な形状はあるにしても、大きさを小さくしたりとか、そういう事ができるわけですから、もっと使い易いダウンウィンドセールを考えても良いかと思います。

但し、一般的に言って、使い易くなればだいたい性能は少し落ちる。でも、本気のレースなら別ですが、ショートハンドでのセーリングを面白くという事であれば、一考の価値はあると思います。

もう10年以上前ですが、あるヨットにファーリングジェネカーですというセールが設置してありました。展開してみますと、これはスピン生地で作った、ドラフトの少し深いジェノアのでかいやつという感じでした。でも、これでも、ダウンウィンドに使えたし、今考えればコードゼロのようなセールだったのかなと思います。とっても気楽に使えるセールでした。

そこで、コードゼロを基本に、例えば、もう少しダウンウィンドまで使える程度で、セールメーカーが言う効率はちょっと脇に置いといて、そういうセールをファーリングにするというのはどうでしょう?
ジェノアだって、強く吹けば、結構ジェノアを開けない事はありません。でも、ダウンウィンドになれば、風力は相対的に落ちますから、セールの重みはいかんともしがたい。そこで、軽い生地のスピン生地なんかですと、ふわりと開く。

セールのラフがジェノアのように一直線でテンションがかかっているとセールは非常に安定しています。ジェノアのようなものです。使い易くなります。これも一考の余地はありそうな気がするんですが?

もちろん、本来のジェネカーの性能に及ばない事はわかっています。でも、ショートハンドで使い易く、しかもダウンウィンドを走れる。これでかなりの進歩ではないでしょうか? それにジャイブは、一旦巻いてジャイブして、また展開にはなります。長いバウポールを出すなら、内側ジャイブが可能かもしれませんが。或いは、外側ジャイブ。

ジェネカーでも、コードゼロでも、昔からあったわけではありません。どこかで、誰かが、こんなセールあったら良いのにと思ったところから、そういうセールが出てきました。という事は、ショートハンドでセーリングを遊ぶ我々が、こんなセールあったら良いのにと考えた所から、定番的に発展しないとも限りません。

そういうセールの効率がどうこう言うなら、ファーリングジェノアは効率が悪い。風によってセールを変えた方が良いに決まっています。でも、使い易さという面を考えれば、これは外せない。そして、これはもう定番になっています。という事は、ダウンウインドセールも同じで、使い易いセールを考えても良いのでは? 効率はやや劣るとしても。

コードゼロのファーリング仕様を発展させて、もうちょっとダウンウィンドまで走れるセール。コードゼロのままでも良いかもしれませんが? 

残念ながら、こういうセールにUVカバーをつけてしまうと、重くなってしまいます。それではと、巻き取った後に、カバーをつければ、セールを設置したままという事も考えられます。セーリングに出る時はカバーを外して、ジブで走り、時に応じてジェネカーならず、コードゼロならず、何と言いますか、そういうセールを展開する。

まえにも書きましたが、欧米での最近のでかいヨットが、ジブとジェノアの2枚のセールが設置され、使い分けてると書きました。それと同じで、上り用と下り用のセールを設置できないか?
コードゼロはNo1ジェノアよりもでかいのが普通ですが、例えば、110%のファーリングジブと、160%ぐらいのコードゼロなんかの組み合わせとか? もう少し大きくても良いかな? 例えばです。そして、そのセールが、多少は上りを犠牲にしても、ダウンウィンドの角度を稼げて、尚且つファーリング?コードゼロのセールを基本にちょっと形を変えて、できないもんでしょうか?

ちょっと勉強してみたいと思います。ジェネカーに捉われず、コードゼロに捉われず、使い易いダウンウィンドセールです。メインとジブは、もう完成されてきた感もありますが、ダウンウィンドではまだまだ。それが証拠に、誰もがメインとジブは展開するも、ダウンウィンドはそうでも無い。もっと使い易いセールの出現が待たれます。

それが実現したら? バウに上り用と、下り用のセールをファーリングにして常時設置する事ができれば、これはもうセーリングの世界が変わります。セーリングが簡単になります。しかも、全角度で誰もがセーリングを楽しめるようになります。そうなるべきかと思いますね。いつかは。

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