第四十四話 進化と淘汰

前々から動かないヨットの話を何度も書いてきました。でも、このまま続くとは思えません。動かないヨットは、いつか消えていくしかないのではないか?

昔とは環境が変わってしまいました。環境が変わるなら、それに合わせて進化していくか、淘汰されていくか?或いは、環境を変えるか?

クルー不足の中で、クルーを捕まえるか、シングルか、或いはやめてしまうかになると思います。
欧米でも、動かないヨットは多いですが、彼らはまた別の使い方をします。別荘的使い方です。
それができるか?

海は相変わらずそこにある。風もある。でも、我々側が変わってしまいました。それも流れですから仕方がない。そこで、やめるか、進むか?進化しなければ、いつかは淘汰される。

10年後に、がら空きのマリーナばかりになったら困ります。そんなマリーナは寂しすぎる。それで、進化を遂げなければなりません。デイセーラーはその進化のひとつだと思っています。

さらに、ピクニック的ファミリークルージングとか、たいそうにどこか遠くに行く事ばかり考えずに、近場での事をもっと増やした方が良いような気がします。1回の遠出より、2回、3回の近場。それを身近に感じるようになれば、遠くだって行ける。どうしても家族が来ないなら、友人でも、シングルでも。

家族と別荘的使い方を演出して、セーリングはシングルでも良い。どうにかしなければ、ヨットには乗れなくなるし、そのうち諦めてしまうかも?

デイセーラーがアメリカで流行ったのも、自分達の環境を見て、進化してきたからではないかと思います。年齢の事もある。大きなヨットが億劫になったり、クルー集めや維持がしんどかったり、そういう環境の変化に対応して、デイセーラーに移って行った。それがデイセーラーが広がるきっかけです。

デイセーラーが流行ると、中には、そう遠くは別としても、ちょっとクルージングも、という方々も増えてくる。日常はデイセーラーが良いのだが? それで、デイセーラーも進化して、その結果、大きなデイセーラー、プライバシーキャビンを持つデイセーラーと変わってきています。こうなると、もはやデイセーラーの域を脱しています。ハイパフォーマンスクルージングです。

今後も沿岸用クルージング艇が最もポピュラーなジャンルとして変わりないと思いますが、その使い方については考える余地はおおいにあるのではないかと思います。これまで通りなら、滅多に使わない事になり兼ねません。そういうヨットを得たなら、基本的使い方をどうするか? 別荘的でも構わない。ピクニックでも構わない。近場のクルージングでも構わない。最も気楽で、最も頻度の高い使い方を考えておく必要があるのではないかと思います。年に1回とか2回と、そういう頻度の事は、いくらそれが楽しくても、それが中心になっては、他は使わない事になり、動かないヨットは傷みもします。

ですから、日常は、マリーナから10マイル圏内ぐらいで楽しむ事を考えておく方が良いのではないでしょうか?そして、他はイベントとして、遠くに行っても良いし、何しても良い。ヨットを楽しむ極意は、近場に有りと思うのですが。

一回出たら、数か月は帰ってこないとか、そういうロングを楽しむ人達にとっては、近場はどうでも良いかもしれません。それはそれで納得ですが、そういうヨットは近場で気楽に出すという気にはならないかもしれません。でも、こういう方は少ないと思います。一般的では無い。それにこういう方は、自分の遊びのスタイルが出来てます。でも、近場を気楽に出せれば、それも面白いかもしれません。

環境の変化に対して進化します。 ヨットそのものの性能的進化もあれば、使う側の使い方の進化もあります。何も新しいだけが進化では無く、古い物を使い方を変えて進化するという事もあるかと思います。自分の年齢に応じた進化、家族の成長に対する進化、社会変化に対する進化、我々は変わります。変わらなければ淘汰されるのみ。

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