第六十四話 セーリングの質

船体が硬いというのは、ヨットにとって重要な要素です。それは、寿命が長いという事だけに留まらず、セーリングの質を変えてしまいます。船底に波を受けて、その波が前から後ろまで流れていきますが、その間にその波はいろんなプレッシャーを船底に与えていると思います。

その流れがスムースに流れるように、船底形状のデザインが影響を与え、そしていろんなプレッシャーに負けない船体の強さが、滑らかさを生み出すのではないかと思います。それはセーリングの質を変えてしまいます。

そして、セーリングの質を問う時、デザインや硬さのみでは無く、排水量をどうするか、バラストをどうするか、そして、セールプランをどうするかで全体のバランスも関係してくる。ある部分が突出しても良く無い。トータルバランスの良さが必要なんだろうと思います。

スピードはもちろん、波との接触具合、安定度、セールエリア、排水量、操船のし易さ、人間はセーリングしながら、何でも感じてしまいますから、その中でどうバランスを取るか?難しい問題です。
でも、今日のデイセーラーの狙いはそこにあると思います。

セーリングを楽しむというのが目的になりますと、操船のし易さはもちろん、何といってもセーリングの質をどうするかが重要になってきます。セーリングが通常のクルージング艇と変わらないのなら、たいした意味は無くなります。

本日、アレリオン33Sのオーナーからお話を聞き、オーナーからこの滑らかなセーリングという言葉が出てきました。私も、初めてアレリオンセーリングを体験した時は、この同じ滑らかさを感じた記憶があります。

あらためて、レーサーはスピードを問い、クルージング艇は快適空間を問い、デイセーラーはセーリングの質を問う。そういう事かな、と思います。

もちろん、船体だけでは無く、セールの材質とかも影響があると思います。それゃあ、レーサーが使うカーボンやケブラーのセールは軽いし、伸びにくいし、良いに決まっています。しかし、あくまでセールはファーリングや、メインはブームに畳まれる事を考えますと、そうはいきません。

先日、アレリオン28のオーナーがノースのペンテックスセールを造られました。これで、どんな違いが出てくるのか?まだ、お話はお伺いしていませんが、近いうちの乗せて頂きたいと思います。

2,3時間のセーリングでは遠くへは行けませんから、必然的に広範囲では無く、深さを求めるようになるかもしれません。質がどうなのか?デイセーリングはそういうセーリングになるのだろうと思います。どこへも行かないかわりに、どうセーリングするか?

そこに目を向けますと、難しさが出てきます。何度も何度も乗って、その感触を味わう。まさしく、デイセーリングにはフィーリングが大事なのだろうと思います。

井の中の蛙、大海を知らずという言葉がありますが、されど、その深さを知るでありますね。大海も面白いでしょうが、その深さも面白い。

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