第七十五話 スポーツ

スポーツフィッシングとかスポーツサイクルとか、スポーツ何とかという言葉がありますが、これは実利を負うのでは無く、そのものを遊ぶ事という事になるんでしょうか、ただ、ただ楽しいというだけでは無く、そこには向上という意識があり、試行錯誤と工夫が盛り込まれます。つまり、何かをするにあたって、そこから利益を得ようという事ではなく、純粋に楽しみ、上手くなっていこう、上手くなる過程を楽しもうという事かと思います。それが面白いからですね。

そうするとスポーツというのは、楽な事ばかりでは無いという事になります。しんどい事もたくさんあります。でも、それらを越えていくところに上達があり、その上達のプロセスが面白さになり、しんどくても続ける事になります。テニスでも、野球でも、走り回ってしんどい事も多い。フィッシングだって同じです。ゆったりやりますと、そこに面白さはありません。

それをセーリングに置き換えてみますと、のんびりコクピットでお弁当食べたり、ビール飲んだりするのはスポーツとは言えません。レジャーです。レジャーはレジャーとして楽しんで良いのですが、それが面白いわけでは無いと思います。もし、セーリングに面白さを求めるなら、それはスポーツするしか無いのではないでしょうか?

他のスポーツと同じように、上達を目指し、工夫と試行錯誤をしながら、時にはしんどい目にも合い、時には快走を楽しむ。その方が、長く続けていける。そこには、楽しさとは違う面白さがあるからだと思います。ヨットは10年、20年と長く続けるのが普通です。そうしたら、そこに面白さを求めるのが良いかと思います。

それはセーリングだけでは無く、クルージングも同様で、クルージングにはクルージングの工夫と試行錯誤があります。ただ、目的地でのご馳走や散策だけでは、物足りなさをいずれは感じるようになるのではないでしょうか?行ったことが無い地を目指すには、それなりのノウハウが必要になります。向上があります。そうでないと、ヨットはただの移動手段という事になります。移動手段なら、もっと他に便利な乗り物があります。

ですから、ヨットにこだわる。どんなヨットが良いのか?どんな性能なのか?これらはみんなヨットをスポーツとして捉えるから必要な事であり、それらがもたらす感じはどうなのか?そこが重視されます。ですから、レジャー的に遊ぶのとはヨットは違ってくる。

レジャーヨットとスポーツヨットでは、セーリングにおける、ヨットが与えてくれるフィーリングが違う。
スポーツ重視ならそのフィーリングは重要かと思います。レジャー重視なら、広さや便利さが重要になると思います。同じように見えるヨットでも、スポーツを意識した途端に、誰でも感覚が鋭くなります。すると、解ってきます。その解る事がスポーツですから、乗れば乗る程に感覚は鋭くなりますから、もっと解るようになる。面白さを求めたらそうなると思います。すると、違いが解る。みんな同じで形が違うだけなら、ヨット自体にはたいした意味は無くなります。でも、現実は、ヨットによって、違う。形状はもちろん、重さ、硬さ、広さ、重心、等々。それらが総合的にもたらすフィーリングはいかに?

自分が成長して、上手くなって、観察力も上がって、進化していきますが、どんなにヨットをメインテナンスしても、本来の性能以上に成長する事はありませんから、その時には、もっと違うヨットを欲しくなるかもしれません。それは自分の成長があるからでしょう。それはヨットの見方が変わるからでしょう。それは良い傾向とも言えます。

車は10年も経てば、二束三文になります。でも、ヨットは20年経ってもちゃんと価値が残る。それは大きな違いです。実際、新艇の市場よりも、中古艇の市場の方が遥かに大きいわけですから。
買い換えるというのは、自分の変化に対する現実の対応という事になります。昔なら、ただサイズアップという意味しか無かったかもしれませんが、今日では、様相は変わってきており、サイズアップ、サイズダウンの他にも、こういうコンセプトのヨットに替えたいというのが出てきています。スポーツ視点かレジャー視点かは分かれるところですが、ちゃんと意識して見る事が重要かもしれません。

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