第九話 時代は変わる

先日、舵社さんから、アレリオン33Sの取材の申し込みがありました。実は、このヨットが日本に来る前から申し込みがあり、いつ入りますか、と聞かれ、ちょっと驚きでもあったんですが、12月に取材を予定する事になりました。

以前、アレリオン28を取材して頂いた事があります。その時は、こちらから、取材してくださいと何度もお願いした経緯があり、やっと実現したわけですが、その時に比べて、時代は変わりつつあると感じている次第です。

昔は、それこそ何年か前までは、デイセーラーはあまりお呼びでは無かった。でも、今は違います。舵社さんの対応を見ても、そうなんだろうな、デイセーラーも少しは認められてきたのかな、という感じがします。

とは言いましても、まだまだ、一般ヨットに比べて、マイナーな存在です。これがこの先メジャーになるとも思えません。しかし、確実に、ある程度の広がりは見せるだろうと思っています。否、期待してますというのが本音でしょうか。

一般ヨットとの明らかな違いは、キャビンとセーリング性能にあります。デイセーラーはセーリングを優先したヨットです。でも、レーサーではありません。昔は、クルージングかレーサーか、という分け方でしたが、デイセーラーは主たる目的はクルージングでは無く、レースでも無い。ただ、シングルでも容易に操船できる操作性と、安定性の高さを持つ、セーリングを主として楽しむヨットです。これはこれまでになかったジャンルです。

セーリング性能を望むには、何ら問題ありません。大歓迎です。でも、昨今のキャビン拡大路線の中、キャビンが狭いというのが、高いハードルでした。それで、躊躇される方は多かった。 でも、この何年かは、遠くにロングクルージングに行く暇は無いとか、キャビンと言っても、寝泊りもしないし、キャビン内設備もほとんど使わないと言われる方々が増えてきました。

最近になって、キャビンを使わなくなったというわけでは無く、良く考えてみると、実際、あまり使ってこなかったという事が分かってきたという事ではないかと思います。

さらに、セーリングの面白さを味わいたい。気軽に出れるようにしたい。シングルハンドを求める。そういう方々が増えてきたのではないかと思います。考えてみれば、デイセーリングは、最も頻繁に使う乗り方でもあります。遠くにクルージングに行く楽しさもあるとは思いますが、滅多に行かないロングより、いかに日常を面白くできるか、そういう風に考える方々が増えてきたのではないかと思います。もちろん、まだマイナー的考え方かもしれませんが。でも、現実はデイセーリングが最も身近な乗り方かと思います。

私にとりましては、とっても有難い事で、いろんな考え方があり、乗り方がありますから、それがひとつづつ増えて、バリエーションができ、選択の幅が増える事は、これからヨットをされる方々にとっても、良い事ではないかと思います。

デイセーリングが最も身近。これは誰にとってもそうだろうと思います。それをするに、どんなヨットでも、クルージング艇でも、レーサーでもできます。でも、デイセーラーは、その名の通り、そこに焦点を絞ってデザインされてきました。だから、セーリング自体は同じではありません。それが、少しづつでも広がっていけば、幸いかと思っています。

デイセーリングは、その日の日帰りセーリング。デイセーラーは、そのセーリングにおいて、いかに気軽に、セールフィーリングを得られるかがテーマです。キャビンを広げる事は簡単ですが、曖昧なフィーリングというものをテーマにしますと、なかなか手強い。でも、フィーリングこそが、最終目的かと思います。ですから、常に進化を続けています。

アレリオン28はもう500艇近くを建造してきていますが、その間に、キール形状が変わったり、ジブブームができたり、エンジンもシャフト式からセールドライブに変わりました。デッキ上の艤装の取り回しも変わってきました。同じように見えて、少しづつ進化しています。

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