第七十四話 キール

船体が強くなったら、今度はキールです。素材はもちろん鉛です。鉛は、錆びないし、比重が重いので、同じ大きさでも、鉄のキールよりも重くできます。それに、鉄よりも柔らかいので、例えば、ぶつけた時なんかですと、キールボルトにかかるショックをやわらげる働きをします。

昔、機走の時でしたが、どかんとぶつけた事があり、慌てて上架しましたが、この鉛の御陰で、キールの鉛が少し削れた程度で、サンダーで整形してすぐに終了した事があります。キールボルトには一切問題がありませんでした。やっぱり違うもんです。

キールの形状は様々。クルージング用は比較的前後に長くして、浅くする傾向にあり、ドラフトを浅くする為ですが、最近は、前後は短くなりました。特にレーサーなんかは前後はかなり短く、その代わり深く、さらに最下部に砲弾型の錘をつけています。スタビリティー向上が狙いです。ただ、面積をすくなくすると、横流れが強くなったりもしますし、面積が広いとスピードに関わる。

前後に短いと、舵のコントロールに対して非常に敏感にコントロールする事ができますね。長いと、例えば、極端なロングキールですと、鋭敏とはいきません。

キールもいろんなデザインが施され、これもどんどん変わっていきます。特に、レーサーはそうです。レース上のレーティングという問題もあります。

一般的に我々が乗るヨットでは、あまり深いと危険でもありますので、せいぜい2m前後以内かな?そして、バラスト比なんですが、昔はみんな35%ぐらいあったのではないかと思うのですが、これに変化が生じてきます。両極に別れてきているのかもしれません。

沿岸クルージング艇ですと、30%を切ってきました。逆に、セーリング重視のヨットは高めの設定です。だいたい40%前後です。これも使い方における考え方の違いもあるでしょうし、昔に比べたら幅が広くなったので、その幅による安定性が増してきた事は事実です。ただ、上部構造物も大きくなってきましたので、安定性はいかにと思わないでもありませんが。

キールの前側、縦のエッジ部分に藤壺なんかがつきますと、水流を乱してしまいます。セーリングに影響を与えます。この程度と考えられるかもしれませんが、セーリングを意識して乗り続けますと、意外や意外、そういう事が解ってきたりします。何か変だなとか感じる事があります。上架してみたら、やっぱりという事があります。ですから、いつもクリーンにして、気持ちの良いセーリングを味わいたいものです。

最近のレーサーではバラスト比が昔より高くなってきているようです。クルーが少なくなったせいか、IRCレースのレーティングの関係かもしれません。このように、いつも変わるんですね。ですが、セーリングをするに、バラスト比が高くて悪い事は無いと思います。レーティングには関係無く。



これはアレリオン28のキールです。重量が下部に集中しています。バラスト比38.6%



こちらはハーバー25のキールです。砲弾がついてます。バラスト比44.9%

どちらもスタビリティーには気を使っています。バラスト比だけでは無く、上部構造物が低いので、
ハル自体の重心も低いですから、安定性は非常に高いです。

今日の一曲  ディジーガレスピー Tin Tin Deo

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