第八十四話 レーシングヨット

いわゆるレーサーは速いのか? 確かに速いです。それゃあそうです。しかし、レースにはご存知の通り、違った種類のヨットが一緒に走るので、その公平を期す為にレーティングなるものがありますので、ただスピードだけを狙ってデザインされるわけでは無く、レーティング上、有利になるなら、スピードを犠牲にもします。デザイン的なテクニックがあるわけです。だから、速いんですが、絶対速いとは言えません。

ところがワンデザインレースとした場合、レーティングなんかは全く無関係でありませんから、どんなにでも出来る事になります。極端な事を言えば、クルージング艇であっても、同じヨットならワンデザインとして成立しますし、スピードをどんどん追い求めたヨットも可能という事になります。

SADR値だけで全てを決定できるわけで無いのはもちろんですが、参考にはなると思います。

   例えば、IRCレーサーのKing 40という
   ヨットがありますが、公平を期す為に、
   セールプランのIJPEから割り出したデ
   ータで計算しますと、SADR値は22です。










   それから、Ker 40というヨットではSADR
   値は29.7でした。この数値の大きな
   差は重量です。Ker 40の方が圧倒的
   に軽いです。セールエリアの差は、そう
   大きくは違わない。










King 40では、IRCレーティング上有利になるように、重量が少し重い。ですから、SADR値が低くなっている。一方、Ker 40 では、そのレーティングを凌ぐスピードでゴールすれば、つまりぶっちぎりでゴールすれば、レーティング上不利でも、修正後でも勝てるヨットという意図があるように思えます。

   さて、デイセーラー/レーサーの数値を
   見ますと、Dinamica 940のIJPEから
   得たデータで計算しますと、SADR値は
   27.7です。










これらを見ますと、Dinamica940はKing40より速いのではないか? Ker 40に近づいてる。それに加えて、これらふたつのレーサーは、クルーをたくさん要するだろうし、その反面、デイセーラーはシングルハンドも可能にしている。

もちろん、これだけで決めつける事はできないのは承知ですが、でも、この数値が物語るのは何でしょうか?デイセーラーが優るとは言いませんが、でも、こういうデイセーラーは最高水準のレーサーのポテンシャルをシングルハンドで可能にしていると言えます。但し、このヨットで、一緒にレースをした場合、レーティング上は不利になって、修正で勝てないかもしれませんが。

ヨットがレースにおけるレーティングに縛られなくなった時、ヨットの性能はもっと上げる事ができる。さらに、それをシングルハンドとか、そういうスタイルにも可能であるという事です。もちろん、こういう高性能なヨットをシングルで操作するには、それなりの腕も必要かとは思いますが、でも、中風以下なら自分なりの操船をして、少しづつ腕を磨く事も可能かもしれない。いつかは乗りこなせるかもしれません。

セーリングを楽しむに、レーティングなんかどうでも良いわけで、スピードを求めて、尚且つ、日常のシングルハンドでの操船のし易さを求めたのが、デイセーラー/レーサーだと思います。そして、その性能は決して他の一般レーサーに劣っていない。シングルハンドでレーサーの性能を楽しめる。こういう遊び方もあって良いのではないでしょうか?何もレースしなくても良いんです。もちろんしても良いんですが、レーティングは兎も角、レースによってはファーストホームも可能でしょう。修正で勝てなくても、ファーストホームは楽しい。レースに出なくても、セーリングは楽しくなる。

今日の一曲  シカゴ 25 or 6 to 4

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