第三十八話 再考の時

かつてはそこにヨットがあれば良かった。でっかくて、充実キャビンで、広くて、見栄もあったでしょう。人も多かった。あの頃は、毎晩のようにマリーナではどんちゃん騒ぎ。

それが、バブル崩壊後、寂しくなり、ヨットは売られ、数も減ってきました。しかし、今日でも、ヨットを続けられてきた方々がおられます。少ないながら、新規にヨットを始められた方もおられます。
物事は急に変化しませんが、徐々にではありますが、ヨットがそこにあれば良かったという時代では無く、そこにあるヨットを、いかに使えるようにするかという事が模索されてきているのではないかと思います。

今は再考の時、それぞれの方々が、自分のライフスタイルに合うヨットを得て、自分のヨットライフを見出す時ではないかと思います。今ヨットをやられる方々は、一時的な好景気に浮かれてされる方々では無く、本物のヨット好きではないかと思います。その今の方々が、よりヨットライフを充実させる事によって、それが、これからの日本におけるヨット文化の基礎になるのではなかろうかと思います。

日本経済をガラパゴス的発展と言う言い方があります。それは日本人の独自の民族性において、独自の発展をしてきたからだと思います。それが、蓋を開けてみますと、世界に通じたわけです。
世界的に見ても、頭は良いし、勤勉だし、ちょっと遊びは苦手かもしれませんが、優秀な国民なわけです。何も、常に欧米に従う必要は無い。独自のガラパゴス的文化として、独自の遊び方をしても良いと思います。それが我々日本人に合うやり方ですから。

幸い、ヨット文化を世界に輸出しようという事はありません。元々は欧米の文化です。それを取り入れて、我々日本人に合う遊び方を楽しめば、それで良いのではないでしょうか?日本人が欧米のやり方を追随している限り、日本人にはしっくり来ないのではないかと思います。それが、滞在型のヨット文化だと思います。

滞在型は、ヨットに寝泊りする事が主体になります。それは日本人には合わない。これは過去を見れば明らかだと思います。これは付随するものにはなれど、主軸には成りえないと思います。ですから、外に出ます。クルージングします。レースします。セーリングします。

この三つは好みでやれば良いわけですが、これは時間の問題と、レースはしょっちゅうというわけではありません。それで、両方をやるにしても、主軸は日常的な気軽なデイセーリングという事をお薦めしてきました。

デイセーリングにもバリエーションがあります。友人や家族を招いて、気軽なピクニックセーリング、彼女を誘ってデートセーリング、そして、真剣なセーリングです。さらに、付け加えるならば、近場へのウィークエンドクルージングや気軽に参加できるレースなんかも楽しめます。

これらの内容は、我々が最も身近で、最も気軽にヨットと関わる事ができるスタイルです。時間も最小限、必要な人間も最小限でできる事柄です。現実的に、今最も稼働率が高いのは、デイセーリングをされている方々です。従って、このやり方とバリエーションが、日本人には最も合うのではなかろうかと思う次第です。

一日に2,3時間の真剣セーリングをしたら、かなり充実感はあると思います。それで、マリーナに帰って、ひとやすみ。或は、友人を誘って、セーリングの味わいを感じてもらいます。こういうデイセーリングの中にも、緊張感を伴う真剣セーリングと、友人と過ごすゆったり感と、いろんなバリエーションを味わう事ができます。それも気軽にです。気軽なだけにしょっちゅうできます。

日本にこのスタイルが主軸として定着するなら、最も気軽なだけに、多くの方々ができますし、新規参入者の方でも、すぐに始められるし、そして、この中からも人によっては外洋に出たり、レースにのめり込んだりされるでしょう。でも、日本人の主軸はデイセーリングにありと考えています。

恐らく、欧米人の主軸は滞在型なのではないかと思いますね。これは日本人スタイルでは無いだろうと思います。考えると楽しそうでもあるんですが、実際とは違う。だから、ほんのたまになら良い程度ではないかと思います。

だから、日本人にはデイセーリングと思っています。もちろん、異論はあると思います。その異論を含めて、今は再考の時ではないでしょうか?

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