第八十七話 サイズとの関係

サイズがでかくなりますと、必然的に小さなヨットよりは実質的な排水量が重くなります。という事は必然的にバラストの実質重量も重くする事ができます。しかしセールエリアもでかくなって、SADR値を高くする事が可能になります。すると、セールエリアの関係で言えば、軽いヨットを造る事ができます。という事は、セールの関係で言えば軽いヨットなのに、バラストの実質重量は重いという事が可能になります。

例えば、アルコナ340のSADRは 22.7です。 セールエリアをバラスト重量で割りますと、
0.034です。 これがアルコナ460になりますと、SADRは26.9となり、セールエリア÷バラスト
重量では、0.029となります。という事は、サイズがでかい方が、セーリングパフォーマンスも高くできますし、強風にも強くできる。サイズがでかくなる事で、いろいろデザインできる範囲が広くなるんでしょうね。

という事は、微軽風にできるだけ強く、尚且つ強風にも強いというヨットを建造する場合、そのヨットのサイズがでかい方が、有利になるという事になります。それで、シングルハンドの容易さをも考慮していきますと、例えば、アレリオン38です。

アレリオン38のSADRは23.4で、セールエリア÷バラスト重量は0.028と極めて強風に強くなります。つまり、サイズが大きくなる場合、排水量は増えますが、同時にサイズの割に軽く作れる範囲が広くなります。それで、SADR値は上がるし、バラスト重量も重くできる。こういう具合です。

逆に、小さなヨットになればなる程に、排水量は軽くなるわけですが、船体重量を20%軽く作るとしても、元々も重量があまり重くは無いわけですから、SADR値をある程度高める事はできても、バラストの絶対重量を高めても限度があります。軽いヨットに40%や50%のバラスト比を与えたとしても、全体が軽いわけですから、バラストの実質重量はそう重くはできない事になります。

ただ、排水量とセールエリアとバラスト重量のバランスをどこで取るか? そういう問題が出てきますが、比較的大きなヨットの方が、バランスの幅が出てくるという事ではないでしょうか?

一般的に、SADR値20〜25あたりで、セールエリア÷バラスト重量が0.038以下なら、かなりセーリングを楽しめると思います。さらに、SADR値が20以下でも、微軽風用セールを使えば、面白いと思います。セールエリア÷バラスト重量の数値は、それが高ければ、リーフが早めに検討される事になります。リーフをすれば良い、ただそれだけで、全体のパフォーマンスは高い方が良い、セーリングは上りだけじゃない、という考えもあります。

そして、セールエリアについてですが、各数値を得る時、それがどんなセール構成になっているかも注意する点かもしれません。あるヨットは大きなジェノアかもしれませんし、あるヨットはノンオーバーラップだったり、セルフタッキングだったりします。これらは、操作性という面で影響がありますから。

サイズとの関係というのは、小さいヨットを軽く作るよりも、大きなヨットを軽く作る方が作りやすい。その結果、パフォーマンスも上がるし、安定も高くなる。だから、大きい方が楽だと言われます。でも、大きいだけに、動かすのは大変かもしれない。それで、電動何やらでサポートします。しかし、楽なだけが良いわけでは無く、小さなヨットはそれなりに面白さがありますし、いかにも操縦している感覚もあります。

もちろん、全てのでかいヨットが良いというわけでは無く、そのヨットにもよります。入手できるデータを自分なりに眺めて、いろんな可能性を計算してみるのも良いのではないでしょうか?

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