第11話 楽しいこと

一般に楽しいことといえば、二種類あると思います。ひとつは快楽をもたらすもの、例えば
映画を見るとか、ドライブするとか、子供なら遊園地とか、そしてもうひとつは趣味の世界。
趣味になると、快楽だけではなく、追求する姿勢が出てきます。ゴルフやるでも、テニス、
野球、何でもそうですが、追及していくと何かを発見したり、上達したり、その中には快楽
だけでは無い、端から見ると苦しみのようなものがあります。でも、当の本人は全く苦しん
でいない。それも楽しいのです。何かをコレクションするのに、どこまでも探し、大枚をはたく。
スポーツがうまくなるのにトレーニングしたり、研究したり。これはやってる本人しか解らない。
映画を見るにしても趣味の域まで行くと、研究していくようになるし、非常に詳しい。

快楽という楽しみと趣味の域の楽しみは全く次元が異なります。ヨットを快楽として見るなら、
確かに、これはそうしょっちゅう乗る物では無くなってきます。だから動かないのでしょうね。
快楽を求めるなら、便利、快適を求めます。しかしながら、所詮、陸上の便利さと快適さには
かなうはずも無いのです。これは視点を変えなければなりません。

夏は暑いし、冬は寒い。行きたい方角が風の真正面なら、真っ直ぐその方向へも行けない。
予定した時間で走る事もできなければ風まかせ、良い時もあれば悪い時もある。陸上と違って
メインテナンスももっと必要ですし、気を使ってやらなければならない。台風がきたら、乗ってい
なくても心配になる。快楽だけを求めてヨットやるなら、これはどうかなと思いますね。

だから趣味の域に達しなければなりません。ヨットの快適さも、不便さも、全てを受け入れなけ
れば、ヨットはできないのです。でも、一旦受け入れると素晴らしい世界も見せてくれることは
確かです。先日、ある人とそんな話をしていました。彼曰く、多分、みんなあのヨットの本当の
走りを知らないんだろうね、といわれていました。同感です。言葉では言えませんので、体感
した方だけが知る世界です。是非、多くの方々に経験してもらいたい。それには、ワンシーズン
でも良いから、乗りこむことです。数多く乗ることで誰でも体験できます。そうすると、ほったらか
しにはできなくなりますよ。チャンスさえあれば乗りたいと思いますよ。

先日、あるオーナーは行き先を決めずに出ると言われていました。良いですね。その日の風向
きによって行き先を決めても良い。

それからセーリングと遠くへの船旅は分けて考えた方が良い。これらは別の種類の使い方です。

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