第22話 シンプルライフ

与えられた時間は1日24時間、これを繰り返して80年というところでしょうか。長いようで、短い
ようで、我々は一体何をこの間にしているのでしょうか。子供から青年へと成長し、ある時期が
来たら仕事をはじめて独立、結婚して、子供ができて、家を建てて、子供を育て、学校にやり、
そして老いていく。こういうおおまかな設計が既にあるから、人々はそれぞれに生きがいや楽しみ
を求めます。この設計図が全く無いのなら、人によって200年も300年も生きるのなら、考え方は
全く違ったものになるかもしれません。ところが、幸か不幸か、人生はだいたい皆さん平均して
80年前後と同じなので、それぞれの時期に充実した人生をおくりたいと願う。

競争社会の現代ですから、人に勝つ事に重点が置かれます。優位性が重んじられる。それが満足
感を与えてくれる。でも、勝つという事は負ける者が居るという事ですから、いつ何時自分が負ける
側に立つかわからない。勝ちと負けの繰り返しです。一時期の負けが未来の勝ちに繋がる事もある
これは誰にも解らない。解らない事は考えても仕方が無い。ならば、その都度全力を尽くして、後は
ゲームのように楽しむのが良かろうと思います。人はああなったら、こうなったらどうしようと悩みます
反面、あれも、これもあれば良いとも考えます。そして余計な物を抱え込むことになります。

勝ち組み、負け組み、という言葉を耳にしますが、これを説く人は自分が負け組みになるとは思って
いない。でも、この長い不況は、勝ち負けというより、全ての日本人にとって勝負を超えた、新しい価
値観を持ち得る機会と捉えることもできる。バブルの大好況で得た物でさえ人は満足しなかった。
これが例え、これから勝ち組になったとしても満足する事は無いでしょう。いつ何時、負け組みに転落
しないとも限らないからです。それに勝って得た物では満足できない事はバブルが証明している。

シンプルライフとは勝負を超えて、自分の本当の価値観に従うことです。人生は勝つ為にあるのでは
無く、楽しむ為にある。勝つ為にするのではなく、楽しむ為に全力を尽くす。他人の価値観で生きるの
では無く、自分の価値観を確認した方が良さそうです。この長い不況はそういう時期ではないかと思う
のです。ですから、これから行うひとつひとつの事を自分の正直な価値観と照らし合わせることが大切
だと思うのです。

ヨットを楽しむ場合も同じです。世界を回るのも良いし、日本一周でも二周でも、沿岸クルージングでも
デイセーリングでも、何でも良い。湾内から出た事無くても、船内に泊まった事なくても、小さくても、
大きくても、豪華でも、貧相でも、速かろうが、遅かろうが、何でも良い。大切な事はどのように楽しみ
たいかという事だけです。それが掴めなければ、どんなヨットであろうとも楽しむ事はできないと思うの
です。そこでヨットの楽しみは3つしかない。基本的にです。レースをするか、セーリングするか、そして
船旅をするか、この3つです。もちろん、このうちのひとつだけという事は無いでしょう。重なり合います。
でも、その中で最も重要視する物をひとつ選ぶ。これを基本にする。その他の付随するものはおまけで
す。このおまけを重要視すると、やがては楽しめなくなります。おまけは不要とは言いません。あれば、
より快適かもしれない。でも、無くても楽しむ事は充分できる。シンプルライフとは付随する機能より、
本来の機能を充分楽しむ事を優先しようという事です。ですから、これからは勝ち組み、負け組みの他
に自分組というのがあります。

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