第85話 キャビンを使う

前の話で、日本人はキャビンを使いきれないという話をしました。欧米人は何か特別な事がなくても、
気軽にヨットで過ごし、別荘代わりにも良く使う。年間係留料の少し割増を払えば、ヨットに住む事も
可能で、そういう希望者が後をたたないそうです。土地や家に執着の無い彼らにとって、ヨットに住む
事は割安なのでしょう。

そういう国民性、生活習慣を持つ彼らが生み出すヨットというのは、全てでは無いものの、やはりキャ
ビンの生活を考えたヨットが出てくる。最近の大量プロダクション艇のキャビン拡大化は、その現れで
はないかと思うのです。日本では、住むどころか、めったりキャビンで過ごす人は居ない。でも、ヨット
が、特に最近のヨットは殆どが欧米からの輸入が主体となり、どうしても、そういうヨットが増えてきた。

日本人の使い方から考えたら、そんなに大きなキャビンとするより、もっと重心を下げてもらいたいし、
もっとバラスト比を高めてもらいたい。と思うのですが、欧米の大衆艇がこういう傾向ですから、仕方な
いのです。これらはセーリングと住まいという関係からしますと、住まいの方に重点があるのではない
かと思えます。でも、これらの分野が最も価格的に安いし、それらがより多く日本に入ってくるのは仕方
が無い事実となります。

それならば、キャビンをもっと使う事を考えたらどうでしょうか。ヨットは出さなくても良いのです。家族や
仲間を呼んで、ヨットでパーティーをやる。週末に家族と泊まる。本当に別荘だと思って、過ごすのです。
そこを基点に、自転車などで周囲を回ったり、桟橋で子供達と釣りをしたり。桟橋で、ラジコンヨットで遊
んでも良い。例え、雨が降っても、船内は快適、もうひとつの家ですから、そういうせっかくある大きなキャ
ビンなら、ヨットである事にこだわらず、家として遊んでしまえば良い。それで、たまに、天気が良いなら、
セーリングに出ます。

大きなキャビン、フリーボードの高いヨット、こういうヨットはセーリングの醍醐味が少し薄れてくる。でも、
それはそれで良い。それなら、キャビンを使いましょう。これもヨット遊びのひとつ。そう割りきることも大切
です。

結局、自分が何を、どう楽しみたいかにかかってくる。私個人的には、ヨットに住もうという気はありません
それで、ヨットと言うと、どしてもセーリングが楽しいヨットという事になり、家族やクルーが来ないことも考え
れば、シングルハンドという選択になる。それで、シングルハンドで乗れるヨットという選択になる。最近は
特に、とことんセーリングの方に傾いてきました。その為なら、キャビンは無いでは困るが、シンプルで充分
という考え方になってきました。セーリングの方が遥かに面白いからです。

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