第五十一話 スペック

仕様書には、全長や排水量や、いろんなスペックが掲載されています。また、船体構造や素材なんかも書かれています。これらは、そのヨットの可能性を意味するもので、その性能をどれだけ引き出せるかは、乗り手の練習次第という事になります。

但し、ハイスペックを持つヨットに乗れば、誰が乗っても、ある程度ハイパフォーマンスが可能になるし、性能的に劣るヨットは、誰が乗っても劣る。当たり前ですが。

注意しなければならない事は、高い性能を持つヨットを乗りこなせれば良いのですが、高すぎる性能は難しくなるという面もあります。それでも、微軽風なら良いし、中風程度でも良いでしょうが、強風という事もあるわけで、その時にどれだけ乗りこなせるか? 性能が高ければ高い程、強風での腕が要求されると思いますが、中風以下では、その高い帆走性能を楽しむ事もできます。
従って、どの程度が良いのかは、どれだけやる気があるのか次第という事になりましょうか?

この性能を簡単に見分ける方法として、排水量とバラスト重量、それにセール面積、これらの事は以前にも書きましたが、その性能を見る事で、そのヨットのコンセプトが解ります。デザイナーが意図したものは何か? どういうオーナーに、どういう風に乗って欲しいか? すべては帆走性能に行き着くと思います。

世界を回るクルージング艇に、誰もレーサーの様な性能を持たせる事は無いわけで、その逆も同様です。ボルボオーシャンレースなんかは例外ですけど、その道のプロが乗るわけですから。

スペックがどうなっているかを見て、是非、デザイナーの意図を想像してみてください。彼は、これで一体何を表現したいのか?標準装備の事もありますね。全長、水線長、吃水、デッキ上のアレンジ、ティラーかラットか、これらによって、実際に操船する事を考えますと、各装備がどこにあるか? それによっては、シングルが可能だったりもします。それだけではありませんが。

いつも何人かで乗る前提なら、分担して操船するわけですから、ヘルムに装備が集中しているのは、返って操作しずらいかもしれませんし、逆に、シングルだったら集中していた方が使いやすい。
計器なんかも、シングルだったら、ラットの前が良いかもしれないが、何人か居るなら、みんなが見えた方が良い。

デザイナーの意図があって、そのうえで、オーナーの意図があって、最終的に完成という事になります。何を設置して、何を設置しないか? どこに設置するか? いろいろ考えますと、楽しいかと思います。ただ、これはまだ最初の入口ですから、面白いのは、乗り出してからです。時々、検討している時が最も楽しかったと言われる方がおられます。でも、本当に面白いのは乗り出してからです。そのセーリングにもっと意識を向けた方が面白いです。楽しさだけでは無く、面白さを創造しなければなりませんね。それはいつも言ってます、より知りたい、より上手くなりたい、より感じたい、そういう成長を促す意識だと思います。その意識があれば、プロセスを面白くする事ができる。

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