第三十八話 強風とそのコンセプト
外洋クルージング艇の場合はいくら強風であっても、逃げる事はできないので、その強風の中を走り抜けられる性能を持つ。風速が15mを超えようが、20mを超えようが、じゃあ、や〜めたとエンジンで帰るわけにはいきません。何があろうと走り続けなければならない。それが外洋艇です。 だから、それができる性能として船体の頑丈さが必要になります。船型も、波が高くても、できるだけオーナーを疲れさせないような柔らかさを持ちます。セールも少し小さめです。排水量もある程度重くないと、外洋ロングとして、積載貨物が多くなる前提ですから、軽い排水量では性能が劇的に変わってしまう事になります。 この事は、セーリングを楽しむ、スピードやその反応を楽しむというようなセーリング性能としては劣る事になります。遅い、鈍い等の言葉が当てはまるようになりますが、それで良い。外洋艇の目的としは良い事になります。 一方、沿岸クルージング艇がその後に出てきます。過ぎる強風ではセールを下ろしてエンジンで帰るとか、避難するとかができます。よって、それ程頑丈である必要性は無い。それより、少し軽くして、セーリング性能を楽しむ事もできる。そして、居住性を高める為に広くなります。これが現代の一般的クルージング艇です。 同じく、デイセーラーも過ぎる強風になれば、セール下ろして帰る事ができます。ただ沿岸クルージング艇と違うのは、居住性よりセーリング性能です。セーリングを重視しますと、その船型、重心、セールエリア、操作性等が重要になり、さらに排水量も軽くした方が良い。しかし、軽いのは良いんだが、船体を強固にしなければならない。何故なら、セーリング重視だから。強風時にいろんな操作をして、そのテンションに耐える強固さが必要ですし、しかも、操作に対する反応や波に対する当たり、滑らかさ等が感じられるのがセーリングです。だから、軽く、でも強固にしなければならない。 強風において、それが制御できれば安心です。しかも、その強風を楽しめるなら面白い。強風が恐怖になるなら、楽しめるはずもありませんが、スリルとして感じられるのであれば面白い。それはオーナーの経験と技術にも寄りますが、ヨットの性能に寄る処も大きい。両方の合計ですし、当然ながら、ヨットの性能が高ければ、オーナーも楽になれる。 ところがバランスの問題で、あまりにも強風に強いヨットとなると、オーナーは楽ですが、ヨットの過ぎたる性能はセーリング性能を犠牲にしてしまいます。だから、外洋に行くには良いが、普段のセーリングには面白さを感じなくなるかもしれません。 よって、そのバランスをどこらあたりで取るか? そこが重要です。この選択は意外に難しくは無いと思います。そのヨットが外洋艇なのか、沿岸用なのか、或はデイセーラーなのか? もうこのコンセプトだけで、その志向している方向が解ります。そして、ジャンルさえ選べば、後は細かい数値を比べていけば、目的の艇に辿り着くだろうと思います。同じジャンル内でも多少は違いますから。 という事で、外洋クルージングか沿岸クルージングかデイセーリングか? もし、たまにクルージングにも行きたいがセーリングも楽しみたいという場合は、レーサークルーザーというジャンルもあります。このジャンルもセーリングを重視していますので、比較的軽めの排水量であります。船体の強固さにおいては艇に寄って、ちょっと差があるようですが?それにシングルハンド仕様というわけではありませんが。でも、二人居れば、取り敢えずはデイセーリングを楽しめますね。 |