第五十七話 スポーツ性
いかなるタイプのヨットであろうと、セーリング自体に注意を向けてセーリングすれば、それはスポーツセーリングになると思います。セーリングをスポーツするとは、セーリングそのものを味わう事だと思います。しかし、異なるのはそのスポーツのレベルです。一般のスポーツにしても、プロレベルもあれば、高いアマチュアレベルから我々一般のレベルまでありますから、セーリングも同じで、そのヨットが提供するスポーツレベルというのがあります。簡単な話、プロ用、アマチュア用、アマチュアでも一般用とでも言いましょうか、別に書いてあるわけでも、分離されているわけでもありませんが、我々一般がプロ用を持つと、手に余る事にもなりかねません。逆に、劣ると面白くありません。 それで、各人の技術、経験は異なりますが、自分に合ったレベル、面白いと感じれるレベルのスポーツ性に見合うヨットを得た方が良いと思いますので、その事について考えてみたいと思います。 まずデイセーラーの特徴は、幅が狭くて、デッキも低い。ですから重心も低く、さらに、バラスト比がだいたい40%前後、いろんなデイセーラーがあっても、そう大きく違う事はありません。この辺りに各デザイナーは適度なバランスを見出したのかもしれません。しかし、大きく違う箇所があります。それは排水量とセール面積です。それで、この二つの要素こそが、そのデイセーラーのスポーツ性を表していると思います。 いつも言いますが、セール面積/排水量比、これで計算しますと、今日のデイセーラーは約18から上は30オーバーまであります。数値が高い程にスポーツ性は高くなります。この数値の違いは、同じ風速だと、数値の大きい方がより速く走れます。数値の大きい方が、セールパワーが大きくなります。とは言っても、絶対的パワーというより、そのヨットに対する影響力の大小です。同じセール面積でも、より軽い船体のヨットには、相対的パワーは大きくなると考えられます。 という事は、同じ風速の中で、より速く走れ、それだけに、セール調整をする事が多くなる。それが故にスポーツ性が高いと言えると思います。これは、セール調整をしなければならないというより、セール調整をする事を楽しむという捉え方です。スポーツは何もしないのでは無く、調整して楽しむのであり、それをどの程度までなら楽しめるかです。 ずばり言って、セール面積/排水量比が20前後、このあたりが我々が最も楽しめる処ではないかと思います。しかも、シングルで楽にというのが前提です。強風に対しても強く、その代わり多少微風で不満は残るかもしれませんが、でも、これは微軽風用セールで対応できますし、何しろ気楽な感じで結構良い感じのセーリングが楽しめるのではないかと思います。 この数値は、ジェノアを持つクルージング艇の上位からそれ以上ぐらいの性能になると思います。それが、デイセーラーの場合はセルフタッキングですし、重心は遥かに低いわけで、操作もし易い。これはトータルセール面積が大きいわけでは無く、むしろ小さい方で、排水量を軽く造っているからです。最も御勧めの処です。多くのデイセーラーがこの部類に入ります。アレリオン、ハーバー、等々です。 さらに、スポーツ性を高めて行きますと、一般ヨットのレーサークルーザーの部類とでも言いましょうか、25前後の数値。レーサークルーザーはクルーを要しますが、デイセーラーではシングルです。その分、重心は低いし、セルフタッキングですし、操作もし易いですが、20前後の数値よりは、同じ風速で速く走れる分、セール操作をする事になります。 これ以上になりますと、クルーザーレーサーの中でも、かなり速い部類に入ります。それをシングルでこなすわけですが、それだけスポーツ性が高まりますので、容易とは言えなくなると思います。腕に自信がある方、高いレベルのスポーツを楽しみたい方、或は、早目にリーフで対応していくという方法もあるかとは思いますが、でも、一般的とは言い難い。 どこまでスポーツ性を求めるかは、各人各様。でも、散々レースをしてきた方とか、これまでずっとクルージングしてきた方では求める処も異なります。スポーツ性が高いから良いという事では無く、自分が求めるスポーツ性がどの当たりかという事が重要で、しかも、シングルで楽に楽しめる事が前提ですから、目安としては、数値が20前後であれば、誰でも面白いセーリングスポーツを楽しめると思います。もうひとつの目安は25前後、ちょっとスポーツレベルが高くなります。そして、30前後になりますと、もうこれはレーサー並です。それをシングルでは厳しいかもしれない。早目のリーフと、強風では、クルーをという事になるかもしれません。 現在お乗りのヨットのデータを出してみてください。それと比較してみればわかりやすいと思います。例えば、今のヨットの数値が20だとしたら、デイセーラーの20の場合、シングルで、しかも、操作性は高く、また、重心も低いので、それだけ乗りやすくなります。セール面積を比較しても、同じ数値でありながら、デイセーラーのセール面積は小さくなっていると思います。それだけに操作はし易い。だったら、22とか23でも良いかもしれませんね。もっとスポーツ性をというなら、25前後の方が面白さとしては良いかもしれない。 スポーツ性の選択は全て、オーナー自身の操作範囲をどれだけ広げるかになります。 風速10m吹いているとして、数値が低いヨットより、数値が高いヨットの方がスピードは速く走っています。それだけに、スピードを楽しめると同時に、それに対するセール調整は数値が低いヨットよりも多くなる。そこを楽しめるかどうかになると思います。 |