第六十七話 ステップアップ

デイセーラーがいくら簡単操作とは言っても、それだけで終わらせるわけには行きません。できれば、ちょっとステップアップして、セーリングをもう少し掘り下げてみたい。そうしたら、新たなフィーリングで面白さが深まりますし、それに、少しでもうまくなった方が格好良いですから。

言わずと知れたセルフタッキングジブ、勝手に左右に動いてくれます。このコントロールはジブシート1本のみです。サイドデッキにトラックなんかありませんから、操作は限定されます。しかし、小さなジブに対して、それをカバーする大きなメインセールが特徴ですから、ジブはほどほどにしても、メインセールを集中的に操作すれば良いかと思います。

メインにはシートの他、トラベラー、バックステー、バング、アウトホール、カニンガム、これらの艤装がありますから、徐々に操作範囲を広げて、セールの角度と形について、少しづつでも理解できれば、面白さは拡大していくと思います。

まずは、大雑把にでも、使う事から始めて、その操作による変化がどうなっているのかを把握して、そこから徐々に全体を洗練させていく。そういうレベルアップをしていってはどうでしょうか?
三角形のセールはドラフト調整、ひねり、縮小/拡大、形としてはこの三つ。それをどの角度で設定するかであります。こう書けば簡単なのですが、それぞれが単独的影響を持つのでは無く、影響し合っている処に複雑さがあります。しかし、ひとつ言える事は、これらは全て、セールパワーのコントロールという事になります。

セールパワーの強さとその作用の方向性のコントロールという事になり、単独で働くのでは無く、すべてが同時に作用している処に複雑さが見える。バックステーひとつとっても、引けばセールはフラットになるが、ラフからフラットになっていくので、ドラフトは浅くなりつつ、ドラフトは後ろ側に残る。さらにリーチも開く。厳密に考えれば考える程、難しさが見えてくる。

そこで一辺にいろいろ扱うと、実際、どれがどう作用したのか解らないかもしれないので、状況にも寄りますが、例えば、簡単な処から、例えば、トラベラー調整のあれこれだけをやってみて、ひとつづつ習得していくのも良いかもしれません。

トラベラーのメインのブロックを引き上げたり、下げたりしてもメインシートは全く動かないので、ブームの上下移動無しで、トラベラーの範囲でブームを左右に振れる。という事はセールの形を変えないで左右に振れる。トラベラーの範囲を超えて出す事はできないし、出したい時はシートを出して、その代わりバングでブームの上下を調整する事になる。という事は、トラベラーの範囲を超えたら、もう必要無いという事になります。

それで、どういう時に使うのかと考えますと、当然ながら、ブームを外にド〜ン出す時は不要で、
セール形状を変えないで角度だけ変える事になりますので、風速が変わらないからセール形状は変えない。でも、角度を変えたい。例えば、風速が弱く、上りを詰めるにはスピードが出ない。そういう時は少し落としてスピードをつけるとか。或は、セールに少しツウィストを設けてリーチを開く為にシートを出す。すると、角度も落ちるので、トラベラーで引き上げて元の角度に戻すとか。

兎に角、シートに何かひとつ加えて、それをどんどん使ってみてはどうでしょう?一辺にあれこれやるとなかなか理解しづらいかもしれません。それで、トラベラーを自由に使えるようになって、慣れたら次にもうひとつ。

そういう事をするというのは、頭も感覚もそういう作用を理解しよう、感じ取ろうとしますから、それまでのセーリングとは当然違ってきます。使うというのは、それに対しての理解と変化を感じ取る感覚が鋭くなるという事ですから、セーリング自体も変わるし、自分も変わるという事になると思います。そうすればきっと面白さも違って来るのではないでしょうか?

デイセーラーは簡単にセーリングができるので、初心者の方にもすぐに乗れるようになる。でも、ステップアップしていく際にも、反応が良いので、ベテランの方にも対応できる。だからセーリングに関しては面白いセーリングが誰にでもできるかと思います。

ステップアップというのは、面白さの創造だと思います。だから、ゆっくりでも良いし、できる事からやれば、絶対にその見返りもあると思います。レースに参加するとか、しないとかに関係無くです。

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