第四十五話 買い替え

長い事ヨットやってますと、必ずと言っていいぐらい、いつか買い替えたいな〜と思う時期がやってきます。買い替えは意外に一般的でもあります。その買い替えの最も大きな理由は、サイズアップにありました。25フィートから30フィートへ、30フィートから35フィートへ、と徐々にでかくなるのが常識的でもありました。

しかし、買い替えによって、もたらされる効果は如何でしょうか? 確かに、サイズアップして、ゆったりした感じにはなります。しかし、一方で、クルー不足が言われ、よって、でかいサイズのヨットでもショートハンド可能というような装備が生まれてきました。

そこで、ひとつ提案なのですが、買い替えの理由を、その使い方のコンセプトを主に考える。その結果、サイズアップが必要であればそれで良い。しかし、闇雲にサイズアップはよしましょうという事です。これまでの使い方を考えて、環境を考えて、時間、人、家族、自分の価値観、等々を考えて、どんなコンセプトのヨットが良いのか?その方が、将来的に長く楽しむ事ができるのではなかろうか?

従って、場合によってはサイズアップならぬ、サイズダウンも考えられる。クルージング艇からレーサーだって、或はその逆だってありえる。もちろん、デイセーラーだって可能性はあるはずなのです。何をどう楽しみたいのか、過去の経験から解るはずですから。

そうやって、ヨット文化が定着していけば行くほど、バラエティーに富んだヨットの選択が生まれます。だからこそ、長い歴史を持つ欧米には、日本には紹介されていない、まだまだ多くのヨットが存在します。それらは、自分達の価値観に従った結果ではないかと思います。

一般的なヨットは、平均して、こういうヨットが最も使えるだろう、人気が出るだろうという考えの元に建造されています。平均ですから、当然ながら、最も多い人口にあてはまる。無難と言えば無難です。それで良い場合もある。しかし、使い方はそれぞれであり、使えば使う程に、個性が生まれます。だから、買い替えの度にサイズアップもあるでしょうが、よりコンセプトを吟味した方が良いのではなかろうかと思います。それは成熟度を表すのかもしれません。

何事にも進化の過程というものがあり、必然として順番に進んでいくかと思います。日本の今という時代はどういう時代か? そういう事を考えましたら、これまでは画一的だったものが、徐々に、成熟していく段階として、いろんな自分に合ったヨットを選択していく時代に入るのではなかろうか?
沿岸クルージング艇がこれからもメジャーである事は変わらないとは思いますが、その周辺はもっといろんなヨットが増えていくのではなかろうか? つまり、いろんな乗り方があり、それに合う、いろんなヨットが増えてくる。そう期待しています。バラエティーに富むのは、成熟度の現れではなかろうかと思います。成熟は過去の固定概念からの開放を促すのではなかろうか。

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