第九十八話 環境の変化

風は毎日違います。毎日どころか、瞬間で変わります。それも時には大きく違ってきたりもします。
もし、環境が変わらずに、天気が良くて、暑くも寒くも無くて、程良い風が常に吹いていたら? こんなに楽しい事は無いかもしれません。

でも、明日も、あさっても、また、来週だって同じです。そうなると、人間は贅沢なもので、そんな良い環境に飽きてきます。やっぱり、環境の変化があるからこそ、いろんな操作が必要になり、そのいろんな操作に熟達していく事によって、より面白さを獲得する事ができる。

つまり、環境の変化において、その対応についていける様に、自分がなる事が要求されます。その要求に応えようとするか否か? そこが分かれ目になるかもしれません。

その環境の変化に対して、物理的な方法もあり、また、自分の腕で対応しようとするかもしれません。物理的方法を取ったとしても、やはり同じ状況が必ず生まれてきます。だから、最終的には、自分の腕を上げるという処を何とかしようと思う必要があります。そこが面白さにつながると思います。

ヨットで何をして、どう楽しみたいか? そんな面倒くさい事を考えずに、ただ楽しめば良い。しかし、この先の10年とかそれ以上の長い期間を考えた時、事はそう単純ではいられないのではなかろうか?

多くの動かないヨットと、しょっちゅう動いているヨット、何が違うのでしょうか? 環境はみんなにとって同じ様に変化します。より速いヨットを持ってくる事もできれば、より便利なヨットを持ってくる事もできます。しかし、最終的には、自分次第なんでしょうね。

どこか遠くに行く必要も無い、でっかいサイズである必要も無い、目の前の海域で、いつでも気軽にセーリングを味わ得る。そこにいろんな環境の変化がありますから、やっぱりセーリングに少しづつでも精通していくと、面白さがたくさん味わ得るのではないかと思います。そして、これには、長い時間が必要ですから、10年やるにもそこにも対応しているというわけです。

これはデイセーリングという乗り方になります。そして、そのセーリングは、どんなヨットでも可能です。ただ、それを目的にしたデイセーラーというヨットもある。

セーリングフィールドを世界に求めたら、何年も必要かもしれない。でも、目の前の海域に求めたら、いつでもしょっちゅうできる。セーリングを求めるなら、しょっちゅうできた方が良いに決まってます。しかも、シングルもできるなら、セーリングに関わる最大公約数がここにあります。

環境の変化は自然の変化だけでは無く、自分の身の回りの変化もあります。その両方を合わせてはじめてセーリングができます。だから、その間を取り持つヨットを最大公約数にしてチャンスを広げます。デイセーラーの考え方は、ヨットを、セーリングを身近に据えて、気軽に、でも、多くを感じる事を目指します。当然ながら、そこに成長もあります。だから、10年でも、20年でも、長く遊ぶ事ができると思います。

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