第十五話 デイセーラー

沿岸クルージング艇がオールマイティーを目指したとするなら、その他のヨットは、それぞれの分野に特化したヨットを建造しています。それが、外洋であったり、レーサーであったりです。そして、このデイセーラーもそのひとつです。

何に特化したのかと言いますと、シングルハンドである事と、セーリング性能の重視です。その為に、キャビンは二の次で、重心を下げる意味でも、狭くなりますから、クルージングとしてはウィークエンド程度としか見ていない。これが最初のデイセーラーの考え方です。

シングルを容易にし、シングルでの操作性を高め、シングルだからこそ安定性を高め、帆走重視だからこそ排水量を軽く、帆走重視だからこそ強固な船体にした。それがデイセーラーです。誰でも、気軽に、シングルハンドでも容易に帆走を楽しむ事ができる。そこを狙ったヨットです。

帆走重視とは言ってもレーサーではありません。今日では、レーサーに匹敵する性能を持つデイセーラーもあります。しかし、それでも、デイセーラーなのです。だからこそシングルハンド仕様にしているわけで、レーサーならその必要はありません。また、クルージング性能を高めたデイセーラーも出てきており、それがクルージング艇と違うのは、やはりシングルハンドであり、帆走重視である事には変わりありません。

という事で、デイセーラーの最大の特徴は、全てをシングルハンド仕様を前提にデザインされ、建造されている事だと思います。そのうえで、帆走重視なのです。

船体の特徴は、フリーボードが低い事です。重心は低く、海面に近い。故に、フィーリングとして全然違ってきます。スピード感もあって、走って面白いかと思います。次に、殆どのデイセーラーがセルフタッキングジブを採用し、メインセールは大き目。細かい調整はメインセールで行う。まあ、実際に乗っていただくと分かりますが、セールフィーリングが違います。

気軽にシングルでもダブルでも、それ以上でも、さっとヨットを出してスイスイ走って、その帆走を楽しむ。誰でも簡単に操船ができるし、初心者にも優しいヨットです。でも、ベテランになりますと、その操作に対応して走ってくれるヨットでもあります。つまり、操作次第でどうにでもなる。

一方、犠牲にしたキャビンは比較的シンプルで、重量を軽くする意味もありますが、キャビン天井も低く、40フィートぐらいにならないと真っ直ぐ立てる天井の高さも無い。キャビンで長く過ごす前提は無く、入ったら座るのが基本です。

でも、サイズがでかくなるにつれ、キャビンも少しづつ凝った造りをしており、船内も広くなります。でも、一般クルージング艇に比べたら、フリーボードは低い。その代わり、人間の背丈を考えない分、とても美しいデザインになっていると思います。クラシック系あり、モダン系あり、今日では、様々なデイセーラーが世界中から建造され、さらに今も増え続けています。

何度も言いますが、レーサーがレーシングカーとするなら、デイセーラーは我々一般が乗れるスポーツカーの様なものです。気軽にスイスイ感を味わ得るヨットなのです。初心者からベテランまで、シングルハンドを含めたセーリングを堪能するには、ぴったりのヨットなのです。

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