第二話 最近のトレンド
沿岸クルージング艇のキャビン拡大競争は、そろそろ終わりに近づいて来た感があります。まあ、一部では、小型サイズにおいてもダブルラットなるヨットが出てきて、ええっ、と驚くような事もありますが、まあ、小型艇に及ぶようになってくると、そろそろ拡大競争は終わりに近いと思われます。 それで、大型艇の動きは、ジョイスティックによる横歩き、これが少しづつ広がっているようで、しばらくはこれで持つでしょう。モーターボートの世界ではその一歩先で、確か、ダイナミックポジショニングシステムという装置があり、GPSと繋がって、ボタンを押せば、その位置からボート動かない様なシステムがあります。桟橋につけたら、スイッチオンで、ボートはその位置をキープ、それからゆっくり桟橋におりてロープを取れば良い。そういう装置です。ヨットにはまだ採用されたという話は聞きませんが、まあ、導入されるとしたら、大型艇から。クルージング艇は、大型艇から、新規の採用が始まり、それが小型艇に及ぶ時は、そのトレンドの終わりに近い。 外洋クルージング艇には、そういう装置は採用されない。目的が明確で、外洋セーリングだから。サイズ的には大型化が目立つようです。また、レーサーにおいては、いろんな縛りがありますので、それの影響は避けられない。よって、欧米ではワンデザインなるレースが増える傾向もある。それにクルーの事もありますし。 これからのレースやクルージングの世界において、デイセーラーの進出が影響を与えていくのではないかと思います。それは、デイセーラーというヨットの発展を見れば推測できます。これまでのデイセーラーは、シングルハンドでハイパフォーマンス、これがコンセプトです。短時間セーリングを堪能する事から、ウィークエンド程度の、1泊か2泊程度の短いクルージング。これがデイセーラーでした。しかし、その後の発展において、新しいスタイルでのクルージングやレースにまで進出してきています。 ひとつはクルージングの範囲を広げる。もちろん、従来のシングル/ハイパフォーマンスはそのままです。それをサイズを大きくする事によって、キャビンを確保しています。幅を広げたり、フリーボードを高くしたりしてキャビンを広げるのではありません。あくまで、従来のデイセーラーコンセプトをそのままにしています。それで、40フィートオーバーのデイセーラーがあっちこっちに出てきています。これがクルージングに対する発展で、もちろん、別荘目的のキャビン拡大では無く、セーリングを主体とした、でも、クルージングにおいても足を伸ばしてきています。 さて、もうひとつの発展はレースに対するものです。特に、ヨーロッパに多く見られますが、超ハイパフォーマンスのデイセーラーです。サイズ的には程良い30フィート前後が多く、このデイセーラーは、レースの世界にも進出してきています。考え方としては、日常的にはシングルまたはショートハンドでデイセーリングを楽しみ、時に、クルーを集めてはレースに挑む。そういうスタイルです。 従来のクルージング艇やレーサーとの違いは、どちらにしても、デイセーラーが基本コンセプトにあり、そのうえで、クルージングも楽しめるとか、レースも楽しめるとか、そういう考え方です。つまり、シングルハンドにおけるセーリングというのを中心に据えている事は同じで、それから、クルージングやレースにも可能性を拡大してきているという事です。いずれにしろ、デイセーリングにおいて、ハイパフォーマンスを堪能できる。そのうえで、クルージングを広げるか、レース側を広げるか、そういう選択が可能になってきている。 従来のクルージング艇とは違う。従来のレーサーとは違う。日常的にはデイセーリングとして堪能する事が保持されています。つまり、デイセーラーには三種類のコンセプトがあるという事になります。一つ目は従来からのデイセーラーで、シングルハンド/ハイパフォーマンスセーリング/ショートクルージングというもので、二つ目は、その基本コンセプト+ロングクルージング、三つ目は、基本コンセプト+レースという事になります。、 この傾向が、今後のヨット界に影響を与えていくのではなかろうか? そんな感じがしています。 何をするにせよ、日常のデイセーリングが基本にある。日常が大事で、クルージングの旅以外の時をどう過ごすか? 別荘かセーリングか? レース以外の時はどうするか? 日常において、気軽にデイセーリングができる。そこを重視しています。これは従来のクルージング艇にも、レーサーにも無い事では無いか? もちろん、どちらもデイセーリングは可能です。でも、ちょっと違うんですね。何が違うって、いずれにしろ、デイセーリングが重視されている事、クルージングだろうがレースだろうが、それでも日常シングルハンドである事です。 |