第三十五話 セールの重さ

ヨットの排水量はセーリングに大きく影響しますが、セールも同様です。セールが重ければ、微軽風で、そのパワーが弱いので、セールは風をはらむどころか、下に垂れ下がってしまう。セールの重さが原因です。セールが形を成せば、少なくとも推進力を得られますが、垂れ下がってはどうしようも無い。

そこで、やはりセールも軽い方が良いという事になります。ところが、その同じセールで強風時も走るわけですから、その大きなパワーにも耐えなければならない。という事で、通常のダクロンセールならば、どうしてもある程度は重くなります。或は、ハイテク技術がそれを補う事になります。

セールは軽く、強風でも伸びにくいセールが良い。通常クルージングに使われるセールはダクロンで、クロスカット、耐久性にとみ、長く使えるとされます。もちろん、これはこれで良い。価格的にも安いし。ただ、重いし、伸びる。これは仕方無い。同じダクロンでも、重さは仕方無いにしても、クロスカットをトライラジアルカットとかして、伸びを抑えるカットもあります。

それで、もし、もっとと望むなら、ハイテクセールを使うと様相は全然違ってきます。軽いのはもちろん、微軽風に良いし、強風だって、伸びにくいと、風のパワーがそのまま伝わる。セールが伸びると、ドラフトが深くなって、後退します。そうすると、大きくヒールする原因になる。そこで、バックステーを引いて、ドラフトを浅くして、カニンガムで、後退したドラフトを前側に移す。それが、伸びないセールだと、こういう事が無いので、楽でもあります。もちろん、バックステーを引いたりして、その操作を楽しむという考え方もありますが。でも、確かに、ハイテクセールはその価値がある。

レースしなくても、セーリングの質を上げる為に、ハイテクセールを使っても良いと思います。それで、一般的には寿命を心配されます。しかし、レースのトップクラスのセーリングを目指すなら、確かに、こういうハイテクセールの寿命は短い。でも、そうでなければ、多少使い込んだハイテクセールであっても、ダクロンよりは良いし、そう考えると、寿命は長いと言える。

昔、クルージング艇にケブラーセール(よれよれ)で走った事ありますが、ダクロンとは全然違っていました。びっくりするぐらいです。ただ、もし、ハイテクセールを使うなら、一緒にハリヤードもハイテクにしておきたい。何故なら、セールは伸びなくても、ハリヤードが伸びしてしまうと、せっかくのセール性能が発揮できないから。セールが伸びないだけに、そのパワーがハリヤードに行きます。

今日、カーボンを使ったセールなんかもありますが、何も、そこまで行かなくても、いろんな種類のセールがあります。ダクロンよりちょっと良いセールから、超ハイテクまで。超ハイテクなんかになりますと、セールが伸びない。それで、一旦セットしたら、不必要に操作をするなと言われるとか、言われないとか?

キャビンの広いヨットで楽しむのも良いが、セーリングにこだわって、質の高いセーリングを目指すのも面白い。セーリングはもはやレーサーの専売特許では無くなった。レーサーはレーシングカーで、デイセーラーは市販のスポーツカーにあたるので、一般的に、セーリングをスポーツするのに向いている。こだわればキリは無いが、まあ、自分のこだわりを遊ぶのも悪く無い。スポーツだからスピードを求める。しかし、質を求める方向もあります。違いが解ると、本当に心が踊ります。

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