第四十二話 現実的考察
世界には、小さなヨットもたくさんあって、保管するのも安上がりだったりして、決して、お金持ちだけの遊びでは無い。しかし、日本は状況が違い、やはりある程度の費用を負担できる人で無いと、なかなかヨット遊びに興じる事は難しい。例え、小さなヨットでも、そこそこのマリーナに保管するとなると、結構な費用がかかります。という事は、現在、日本に約1万艇ぐらいのヨットがありますが、皆さん、その維持にかなりの費用を支払ってあるわけです。 にも拘わらず、多くの方々が、あまり有効にヨットに関わっておられるようには見えない。もちろん、頻度だけの問題では無いとは思いますが、でも、あまりにも動かないヨットが多すぎる。それで、思うに、手に入れる前に、あまりにもユートピア的想像ばかりで、現実になると、そのギャップによって、上手い事運営ができなくなるのではなかろうか?従って、良い想像も良いのですが、現実を踏まえて考えないと、なかなかヨットを現実的に満喫することは難しくなる。逆に、現実的だと、ヨットから、たくさんのものを得る事ができる。 とは言うものの、最初に夢が無いと、ヨットに目が向きません。ですから、最初は良い。でも、現実的に手に入れようと考える時には、その現実との調整も考慮した方が良いかと思います。それで、その現実とは? セーリングは優雅さばかりでは無い、辛い事もある。微風で退屈な事もある。暑かったり、寒かったり、雨が降ったり、いろいろあります。天候だけを考えるなら、日本には明確な四季があり、暑いのも寒いのも簡単に想像できます。自然とはそういうもので、ヨットはその自然の中に居る。 そういう自然の中だと、いろんな事ありますので、ヨットに特別な思いが無い方、ゲストとかは、条件の良くない時なんかですと、全く楽しくないわけで、優雅さだけを求めるかもしれません。だから、家族は来ないし、奥さんは来ないし、だからファミリークルージングなんか無い。例外はもちろんありますが、一般的には無いと言えます。オーナーでさえ辛かったり、恐怖感を持つわけですから、ゲストならば当然な事であります。 ところが、考え方次第で、自然がいろんな状況を造るわけですが、それは、海という、どこにでもある環境、セーリングの舞台をいろいろ変えてくれるわけです。舞台設定が、いろいろ変化するわけです。その舞台で演じる人は同じ人ですが、環境はいつも違う。だからこそ、面白さを得る事ができるとも考えられます。もし、舞台がいつも同じなら、繰り返す度に飽きてきます。 という事は、いろいろあるから辛かったり、退屈だったりしますが、いろいろあるから面白いとも言えるわけで、それで、現実的に本当に面白くしようと思うなら、退屈な微風を何とか、自分の工夫で面白くするとか、辛い強風を、何とかして、自由自在に余裕で走らせる事ができるようになれば、それこそ、面白さに変える事ができるのではないかと思います。そうなると、いろいろあるから面白いと言えるようになれるのではなかろうか? そうは言っても、確かに辛い時は辛い。でも、何とかしながら、帰ってきた時、ほっとして、どこかで、その状況を自慢気に話すかもしれません。それは、エピソードとして面白いからです。何も、辛さを積極的に求める必要は無いのですが、遭遇する事もあります。でも、乗り切った時に、その経験は、二度目は一度目程の辛さ程は無いかと思います。経験済ですから。知らないと怖いのですが、知れば、軽減される。ですから、長い期間に、繰り返し乗り続ける事は、豊富な経験の積み重ねで、余裕を創り、それがより面白さへの転換とする事になると思います。 もちろん、ちょっとづつで良いわけで、何といっても、繰り返し乗る事が重要なんだろうと思います。 ひとつ言える事は、最高のセーリングを求めて出るというより、今日のセーリングはどうなんだろうと興味深々で乗れる方が良いのかな? そして、その結果を受け取る。結果、最高のセーリングかもしれないし、退屈かもしれない、高度の緊張感かもしれません。いずれにしろ、今日の結果を、良い悪いでは無く、いかに対応できたかと考えた方が良いのかもしれません。それを続けると、全体のセーリングを如何にと演出できるのではないかと思います。今日のセーリングが最高だろうと最低だろうと、どっちでも良い。最低があるから最高もあるわけで、それを受け入れて、長く続ければ、最低から最高までの全てを均等に味う事ができて、自分の対応もベターになっていって、そうなると、トータルで面白かったとなる? ヨットはいろいろあるから、楽しさでは無く、面白さを如何にと考えた方が現実的ではなかろうか? それで、楽しさより面白さの方が何倍も遊ばせてくれる。面白さを追求していれば、楽しい場面なんかはいくらでも出てくる。逆に、楽しさばかりを追求しても、面白さは出てこない。否、楽しさを求めて、そうで無い事もたくさんあって、やっと楽しさを得られたら面白さも出てくる。という事は、面白さには、いろんな要素が含まれなければならないという事になります。 欧米人が、ヨットを別荘的にしょっちゅう使いますが、あれは、楽しいから? いつもいつも楽しいわけじゃないと思います。では、何故、そうしょっちゅう使えるのか? 多分、仕事していない時間を持つという事が重要で、何をしているかより、仕事では無い処に、彼らは価値を感じるのではなかろうか?偏見かな〜? 早期引退したがる人は多いし。日本人は仕事に生きがいややりがいを求めます。これは大きな違いではなかろうか? |