第七十九話 ピクニック

これからヨットを始める方々は多分、セーリングの良い感じを想像されると思います。これはまさしくピクニックセーリングです。セーリングの導入部として、ピクニックはおおいに楽しむべきかと思います。夏と冬には、結構厳しいものがありますが、春と秋には、ピクニックに最高かもしれません。家族を誘い、友人を誘い、エキゾチックなセーリングを満喫していただきたいと思います。

それに慣れてきた頃、それは飽きも顔を出し始める。最小限の操作で簡単でというセーリングには、もう卒業という感じかもしれません。だから、乗る回数も減ってくる。ピクニックと言えど、良い風が吹いてきたら、快走感を味わ得る。でも、そういうチャンスは多くは無い。そんな偶然を待ち続けるのは、ちょっとどうか? 乗る回数が減るのは当たり前かと思います。ピクニックはレジャーですから。

そこで、そんな時期が来たら、考えるセーリングを始めるのが良い。快走感も味わったし、そこに何らかの感情を得たなら、それ以上面白い何かを得る為に、偶然任せにしないで、主体的なセーリングをした方が良い。そこから先は面白さを得る事を考えます。それが考えるセーリングだと思います。そうなる迄は、どんどんピクニックセーリングを満喫しましょう。ピクニックの楽しさを充分味わっておいて、それからです。ピクニックの効用は他にもあって、身も心も、自分のヨットや海に馴染むという感覚を得る事もできます。これは重要です。

決してピクニックを否定しているわけでもありません。考えるセーリングをしても、時々はピクニックを楽しむ方が良いと思います。家族や友人をおおいに楽しませてあげる事はとっても大切な事ですから。でも、考えるセーリングをしてきたら、そのピクニックも以前とは違ってくると思います。何しろ、セーリングというものが、以前より解っています。そうすると、ゲストを楽しませる方法が違って来る。よりセーリングの醍醐味を味わっていただける。それが、結局はゲストにとっても面白いはずです。

穏やかなセーリングばかりでは、ゲストも退屈になります。一度か二度乗れば充分かもしれない。それこそ、ゲストにとってはレジャーなんですから。それで、楽しさに加えて面白さをちらりと見せる。それができるのは、考えるセーリングをしてきたから。

そんなオーナーのヨットに乗る時、ゲストも安心です。ヨット知らずとも、何となくゲストだって解る。
強風になって、キャーキャー言いながらも、安心なのです。ジェットコースターに乗ってキャーキャー叫びながら楽しいのです。そんな時、キャビンは必要だろうか?どんな豪華なキャビンより、セーリングの方が面白い。ただ、ステータス的要素はでかいキャビンかもしれないですが。

臨機応変、時に応じ、人に応じ、自由自在にピクニックを楽しむ。これも、考えるセーリングを普段の軸としてやってきたからこそできる事。両方を楽しんでいただきたいと思います。

クルージング艇に比べたら、ボリュームは小さいし、世間に対してはステータス感も薄いかもしれません。でも、そんな事気にしない事の方がカッコイイと思います。自由自在に乗れるなんて、でかいヨットを持て余すより、何倍もカッコイイ。それに、デイセーラーは美しいので、存在感はあります。
美しいヨットを美しく走らせる。これがデイセーラーです。

最後に、ピクニックが単独で成立するのは、そのマリーナがエンターテインメント性が高く、仮に、ヨットを出さなくても、そのマリーナに居て、それだけでも楽しめる場合では無いかと思います。こういうマリーナでは、ヨット好き嫌いに拘わらず、家族も来たくなるだろうし、友人達もしかり。そのうえでピクニックセーリングは最高になると思います。仮に、強風や雨などでヨット出さなくても、全く困らない。そこが楽しいから。そんなマリーナは多くは無いと思います。あるオーナーの奥さんの話しです。何故、ヨットに来ないか?という質問に対して、マリーナに来ても楽しくないからと答えられました。彼女は、ヨットに特別な思いはありません。でも、たま〜に楽しむ分には良いのかもしれません。でも、進水式の時に一度、その後はもう一回程度しか来られなかった。ピクニックとマリーナは互いに補助し合う関係になるかと思います。だから、マリーナがそういう魅力に欠ける場合、長期に渡って、ピクニックだけで済ませる事は無理なのではなかろうかと思う次第です。また、別荘的使い方も同じだろうと思います。だからこそ、次のステップとして、考えるセーリングを御勧めしています。

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