第八十六話  感じる心、考える頭脳 

面白さって、感じるものですよね。気持ちの良さ、悪さ、みんな感じる事です。豪華なヨットに乗って、それだけでは楽しくなくて、その豪華さを感じなくては意味がありません。そこに豪華である事の意味があると思います。操船がうまくなったら、その技術が楽しいわけでは無く、それによって発生するセーリングが楽しいと感じます。全ては、感覚的に感じて初めて意味が出てくると思います。我々の究極の目的は、行為でも無く、物でも無く、それらを通じて感じる心だと思います。でも、その為に、行為や物が必要になります。

宴会が楽しかったら、宴会するし、それが楽しく無くなるまで何回でもやります。レースもそうですし、クルージングもそうです。ピクニックも飽きるまでやります。何をするにも重要な事は、感じる心だと思います。その他は全て、その為の手段という事になります。ですから、心で何を感じているかが重要だろうと思います。

宴会は誰でもすぐにできます。ピクニックもすぐにできます。しかし、すぐに簡単に出来る事って、結構飽きやすいんだろうと思います。だから、ちょっと難しい事をしたくなります。遠くに行きたくなったり、レースでより速く走る事だったりします。それはそれで良いのですが、ひとつの提案があります。それは、すぐに出来るけれど、でもやれば難しい事です。レースより、クルージングより、簡単にすぐできます。しかし、やれば難しいのです。

それが、これまで何度も言ってきました。デイセーリングです。これなら、ヨットさえあれば、誰でもすぐにできます。デイセーラーならひとりでできますから、尚簡単です。誰かの都合を聞く必要も無いし、自分の都合だけで動けます。しかも、時間もあまりかからない。もちろん、かけても良いのですが、でも、短い時間で充分堪能できます。

但し、これはピクニックとは違います。何か事をやるに、簡単である事は重要かと思います。そうじゃないと、気軽に何度もやれません。でも、簡単なだけでは、宴会やピクニックの様に、すぐに飽きるか、或は、頻繁にはやれません。ですから、難しさも必要になります。

それがスポーツセーリングです。ピクニックだけやってても、心はそのうち物足りなさを感じてきますから、その同じセーリングをスポーツする事によって、その難しさに挑戦します。やるのは簡単、でも、その奥は難しい。その難しさに挑戦する事が、心をワクワクさせます。つまり、難しさを少しづつ紐解きながら、その都度グッドフィーリングを得ていこうという話しです。感じる心を軸にして考えないと、自分の心を遊ばせないと、面白くありません。

セーリングをスポーツするようになりますと、その奥深さが解ってきます。だから、長年続けていく事ができますし、そのプロセスにおいて面白さを持続する事ができると思います。ヨットをステータスにと考える事もできますが、また、ピクニックや宴会レジャーとも考える事もできますが、もうひとつ、本当の意味での、面白さ、良い気分程度では無く、ワクワクするような心の遊びを味わってみては如何でしょうか? それがスポーツする事だと思います。

その為に、心と頭をセーリングに注いで、てきとうに操作していた事を、ひとつひとつ考えて、感じながら操作をする。セーリングに心(頭脳)を置く、それがスポーツセーリングだと思います。セーリングというスポーツは、他のスポーツの様に、肉体的運動能力が必要というより、むしろ、肉体より、頭脳と心の方が左右すると思います。肉体の動きは、舵操作やシート操作ですが、肉体的な動きはそうはありません。でも、その少ない肉体の動きを命令する頭脳や心の方が遥かに動いています。つまり、セーリングというスポーツは、どちらかと言うと、頭脳と心のスポーツの方が強いと思います。

だから、心と頭脳さえその気になれば、いくらでも面白さを得る事ができる。肉体的な運動能力なんかそう必要無いと思います。頭で考えて、肉体でちょっと操作して、心でたくさん感じる。ならば、頭脳と心を特に注意してスポーツすれば、面白いに決まってます。しかし、より持続的な面白さを望むのであれば、その心と頭脳は鍛えていかなければなりません。体を鍛える必要はあまり無いが、その代わり頭脳と心だと思います。頭脳と心を鍛える方が遥かに簡単だと思います。

そういうスポーツ特性がありますから、仕事引退してからでもできる。問題は肉体では無く、頭脳と心ですから。肉体を今から鍛えようと思うと大変ですが、頭脳と心は、いくらでも鍛えられる。もう年だから、と思う心が問題です。もちろん、プロになろうと言うレベルの話しでは無いわけで、自分の心がワクワクすれば良いわけですから。ちょっとその気になりさえすれば良い。それだけです。

家族がもし来るとしたら、まあ、殆ど来ないですが、でも、それを考えるなら、年に何回でしょう?クルージングを楽しむとしたら、年に何回でしょう? 一年間の殆どの日数は、ヨットはマリーナで遊んでいます。だとするなら、日常にセーリングを楽しむのは悪い話しじゃ無い。そして、それがピクニックなら、これもそうしょっちゅうはない。でも、セーリングをスポーツしたら、それが主軸になる可能性があります。それ程、スポーツしたらワクワク感が増えていく。何故なら、スポーツしているのは、心だからです。頭脳はそのサポート、体はそのまたサポートです。面白さを感じるのが心ですから、その心を主軸に置くのがスポーツセーリングですから、当然だと思います。

しかるに、大抵は、何をするかに主軸があり、その結果を心が判断します。良かった、楽しかった、つまらなかった、等々、だから、楽しさや面白さはたま〜にしか味わえなくなるのではないかと思います。だから、たま〜にしか乗らなくなるのかもしれません。だから、スポーツセーリングして、心を動かしましょう。ワクワク感を得ましょうという提案です。

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