第二話 デイセーリングの意義

デイセーリングという乗り方は、どうも軽んじられ過ぎているように思います。 人は遠くばかりを見て、目の前をあまり見ていない。あまりにも身近過ぎて。 人は遠い方が価値があると思ってしまう。 だから、旅を重んじる。外洋、日本一周、世界へ。或は、レース、グランプリレースからローカルのレースまで、いろいろありますが、もちろん、これも価値があり、面白いと思います。これらはこれらで良いわけですが、それに対して、デイセーリングという乗り方は、あまりにも軽んじられ過ぎている様な気がします。

考えてみますと、どの乗り方よりも、最も手軽に、誰でも楽しめる乗り方です。時間もクルージング程必要なわけじゃない。しかも、セールさえあれば、どんなヨットでもデイセーリングをする事ができます。にも拘わらず、あまり重視されていない様な気がします。身近だからこそかもしれませんが。

本来なら、このデイセーリングが最も多くなされる乗り方であるべきだと思います。旅は時間をかけなければなりません。レースは誰かが主催してくれないと成立しません。でも、デイセーリングは、いつでも、オーナーがその気になればできる事であり、シングルでも、誰を誘っても良いし、特別高度な技術が要るわけでもありません。だったら、天気の良い週末なんかは、うじゃうじゃヨットがデイセーリングを楽しんでいてもおかしくないと思うわけです。

ところが現実は違います。マリーナには、ヨットがたくさん係留されています。オーナーはマリーナに来ていない。一部の方がレースを楽しみ、一部の方はどこかの旅に出かけてあるのかもしれません。また、一部、デイセーリングを楽しんである方もおられますが、全体からみたら、みんな少数派です。大半の方々は、どうなんでしょうか?旅に憧れ、でも、今は忙しいとか、そういう事なんでしょうか?

もし、忙しいのなら、レースにも興味が無いのなら、最も簡単に楽しめるのがデイセーリングだと思います。それなら、誰でもできるはずです。旅もしない、レースもしない、何もしない。かと言って、海外の人達の様に、キャビンに泊まってる様子も無い。でも、デイセーリングなら、それら一切の縛りはありません。まあ、あるとしたら天候ぐらいでしょうか。ならば、もっとデイセーリングという乗り方が一般的になっても良いのではなかろうか? 気軽に、ちょいとセーリングしてくる。そんなスタイルでヨットを楽しむ事ができたら、当然ながら、それだけで終わらず、宴会したり、ヨットに泊まったりという事も増えるのではなかろうか?

どんなスタイルであれ、普段乗らないのなら、急にある日、遠くへ旅するなんて事は難しいのではないかと思います。だから、もっとデイセーリングを気軽にやった方が良いと思います。どんなヨットであれです。日常が大事なのではないかと思います。

デイセーリングには、お気軽なピクニックもできるし、本格的なスポーツセーリングもできます。セーリングの範囲が近場にあるというだけで、海と風は、どこで乗っても同じです。近いから、気軽に出せる。近いから時間もかからない。近いから、気象条件によってはすぐ帰れる。でも、海と風はあるので、ピクニックでも、本格スポーツでも、思いのままなのです。こんなハードルが低い条件なら、一般的な使い方になっても当然だと思う次第です。

デイセーリングという乗り方がもっと増えて欲しいと思います。これが、一般的なスタイルになって欲しい。そうすれば、ヨットに関わる機会が増えます。機会が増えれば、望む方はレースや旅にも門戸が大きく開かれる。もちろん、スポーツセーリングへも行ける。デイセーリングの意義は、全ての用途に対して、門戸を大きく開く事ではないかと思います。だから、デイセーリングをもっと楽しんで頂きたいと思います。日常はデイセーリング、望む方は時にクルージングやレース、宴会、船中泊等々、デイセーリングが中心に回ります。近いからこそ疎んじられがちですが、そのデイセーリングには、ピクニックから、本格スポーツセーリングまで、あらゆるセーリングの粋が凝縮しています。

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