第三十四話 質を問う




      デイセーラーはシンプルです。でも、シンプルであるが故に、よりその質を問います。何故なら、セーリングとそ
      のフィーリングにヨットマンの注意が、より向けられるからです。 

      その質の最たるものは、船体の硬さと剛性だと思います。それらが、セーリング及びフィーリングに非常に影響
      を与えます。造船所が造るのは、この船体であり、この良し悪しが全ての基準となり、非常に重要です。 マスト
      もウィンチも、様々な部品は、外部からの供給です。もちろん、設置の仕方もありますが。

      今日、多くのデイセーラーが、最新のバキューム/インフュージョン工法を取っています。これは、積層間に空
      気を残さず、しかも、グラスと樹脂の最適な比率をコントロールする事ができるからです。樹脂が少なくても、多
      すぎても、強度に関わる。それがきちんとコントロールできるのが、この工法です。グラスと樹脂の最適な比率
      を得れば、従来のハンドレイアップの2倍以上の強度と言われます。

      また、船体剛性を高めるには、ハルに厚みをつけなければなりません。この厚みと同時に、軽量化の為にバル
      サ材やデビニセル等のサンドイッチ構造にするのは一般的になりましたが、この工法はそれらの接着力におい
      ても効果的です。かつては、この積層の剥離の問題もありました。

      さらに、船内ストリンガーやバルクヘッド、船内家具類をハルとデッキにパテ接着では無く、きちんと積層します。
      これらの構造と手間が、船体剛性をさらに高めます。中でも、特に、ハイスピードを狙い、軽量化を図る場合は、
      内装家具類を含めて、あらゆるパーツの全てをこの工法で建造しています。だから非常に軽い。

      船体は、波が当たり、セールから来る強大なストレスに耐えねばならないし、質を問うなら、さらに強靭でなけれ
      ばなりません。強度が低いと捻じれたり、波に当たって、一時的に引っ込んだりします。それで、壊れるわけでは
      無いでしょうが、セーリングパフォーマンスに影響を与え、もちろん、フィーリングも違ってきます。

      船体強度が高いと、時化た時の波当たりに強度を感じ、安心であるばかりか、セーリングに滑らかさを感じます。
      これが、何とも気持ちが良い、セーリングの質を感じます。セーリングはパフォーマンスが重要ですが、フィーリ
      ングも重要です。走れば、それで良しというわけには行きません。たかがフィーリングと思われるかもしれませ
      んが、実際に味わって、解ってしまうと、このフィーリングが手放せなくなります。

      この船体があって、そのうえで、排水量、バラスト重量、セール面積等々が吟味され、そのヨットのパフォーマン
      スとフィーリングを決定づける事になります。軽量化と強度の両立、最も重要な質の要素だと思います。
      頑丈だけれどヘビー級なんていうのとは次元が違います。

      下の写真は、アレリオンの建造工程の一場面です。ポンプで樹脂を送り込み、真空ポンプによる大気圧での圧着
      がなされます。そして、余分な樹脂はパイプを通じて出て行きます。この制御の精度が重要です。

           
     
     

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