第三十五話 デイセーラーというヨット




       硬く、剛性の高い船体を手に入れ、その上で、パフォーマンスを吟味し、そのセーリング性能を自分の操作
       を通じて味うのがデイセーラーです。ここから、あそこへの移動というわけでは無く、どう操作して、どう走ら
       せて、どんなフィーリングを得たかが、このヨットのスタイルです。それはスポーツカーでドライブに行くのと同
       じようなもの。そのドライブ感を楽しむ事になります。

       スポーツカーの座席に座ると、その位置が低い。もう、これだけで気分が違います。それから、速いというの
       もあるんですが、その他、ステアリング操作、足回り、ブレーキ、ボディー剛性等々の全てがドライブ感になっ
       てあらわれる。スポーツカーに乗ると、誰でも、そういう事をより多く感じてしまいます。それは、無意識のうち
       にスポーツカーに乗っているという意識が、自分の感覚をドライブモードにしてしまうのかもしれません。また、
       速いと言って、その車にはトップスピードというのがあるわけですが、現実的に、そのトップスピードを日本
       の道路で走る事はありません。でも、それでも、違うものは違うわけです。時速100Kmで走っても違うのです。
 
       デイセーラーのコンセプトは、そういうのに似ています。どこかに行こうと思えば行けますが、本来はそのヨッ
       トの持つ性能、ドライブ感を楽しむのが目的になると思います。日本では、まだまだこういうスタイルは根付い
       ていないのかもしれませんが、そういうのもあって良いと思っています。今までは、遠くへ、遠くへとみんな考
       えていました。しかし、遠くだけが全てじゃ無いし、近場であるが故にできる事があります。

       どこか遠くに行った事なんて無い。二日も三日も連続して走った事無い。でも、セーリングの妙を感じとれる
       感性がある。微妙な違いが分かる。セーリングが解っている。ヨットに対するフィット感を体に感じている。
       そういうスタイルもあります。

       こういう近場で、気軽に、誰でも出来る事が、本当はメジャー的な使い方になってもおかしく無いと思ってい
       ます。たま〜にしかしない使い方がメジャーになるのは、やっぱり、変ではないかと思います。という事で、
       デイセーリングがもっともっと認知され、暇つぶしでは無く、確立されたスタイルとして広がり、ヨットが身近な
       ものとして捉えられるようになれば良いかな〜。ヨットと言えばクルージングでは無く、まずは、ヨットと言えば
       セーリングであります。

      

     

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