第六十四話 目標(テーマ)



      
ただ、遊んでいても、そのうち飽きてきます。広いキャビンで、みんなで宴会しても、それだけじゃ飽きてきます。頻度が高ければ高い程、飽きてきます。だから、目標を設定して、それに対して行動していく。その目標に近づいていき、達成していく事で、我々は大きな喜びを得る事ができる。そういう風にできているんだろうと思います。

恐らく、動物的本能の分野であるなら、同じ事を何度やっても飽きる事は無いとは思います。空腹に対して食べるというのは本能ですから、食べるのを飽きる事は無い。しかし、それでも、毎日同じメニューならやっぱり飽きる。それは人間が、空腹を満たす為だけでは無い、それ以上の何かを満たす事を求めるからだと思います。ステーキを食べたくなったり、ラーメンが食べたくなったり。

それで、ヨットに何を求めるか? これは人間の動物としての本能では無いので、その行為から満足感を得る為には、やはり目標を設定して、そこに進むという事があった方が、より満足度は高くなると思います。面白さとは、その瞬間の状態、例えば、良い風が吹いて快走するという事もあるわけですが、それはその瞬間で偶然の風でもありますし、もし、それが常に繰り返されるのであれば、それからも満足感は得られなくなる。だから、それとは別に、基本的には、目標と達成、これはストレスとリラックス、緊張と緩和とも言えます。

それで、自分で目標を設定します。上手くなりたいという曖昧なものより、具体的な方が良い。セーリングに関しては何でも良いと思います。シングルハンドで気軽に出し入れができるようになるとか、友人を誘ってピクニックセーリングを楽に楽しめるようになりたいとか、或いは、もっと突っ込んで、前にも書きました上りのセーリングをテーマにして、自分のヨットの性能をより詳しく知りたいとか、ジェネカーを使えるようになりたいとか、いろいろあります。それが、できるように近づいていくプロセスには面白さがありますし、それができれば達成感もあります。

そして、すかさず、次のテーマを設定していく。仕事じゃ無いんだからと思われるかもしれませんが、やってる人間の本質は変わらないので、やっぱり同じ事、遊びだから、それを楽しく、面白くできる。クルージングが好きな人は、どこどこに行く、行ったら、次はどこに行きたい、その次はとテーマが変わっていきます。それが無くなった時、飽きてくると思います。

レースにしたって、毎回同じメンバーで、毎回順位が一緒なら飽きます。でも、その都度、順位が入れ替わったり、僅差で勝ったり負けたりしますから、次は、あの艇には負けたくない。そういうテーマが面白さだろうと思います。

という事で、是非、自分独自のテーマを設けてみては如何でしょうか? 宴会が悪いという意味では無く、宴会したかったらそれをテーマにしてやります。でも、達成したら、そのテーマを変えないと飽きてきます。
ピクニックが楽にできるようになったら、もっとセーリングに別のテーマを持ってきて、先に進まないと面白さは得られなくなると思います。人間のやってる事は、セーリングに限らず、あらゆる事において、生存本能においてさえ、プラスアルファを求めます。だからこそ、その満足感には、目標設定があった方が満足感は高くなるのではないかと思います。

        

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