第八十六話 セールパワーとその処理



      
さて、これまでで、セール調整には、角度調整、リーチ(ツウィスト)調整、ドラフト(揚力)調整とに分けられ、各艤装がどういう作用をするかを見てきました。次に考えられる事は、これら三つの調整をどう組み合わせて、取り扱っていくかという事になると思います。

基本的な考え方として、この三つの要素を考えた時、最も重要なのは、セールパワー(揚力)だと思います。何故なら、そのパワーはヨットを走らせる為のエネルギーそのものです。このパワーの大きさによって、セーリングがほぼ決まってしまいます。そして、そのパワーをどういう方向に流すかはセール角度によって調整され、そして最後にリーチの開きによって調整されます。リーチは言わば開閉弁の様な物で、弁を閉じた状態(セールの基本設定)ではパワーを全部取り込み、弁を開いた状態(リーチを開いた状態)でパワーを逃がします。セールで造ったパワーを最後に調整する役目です。

という事は、やっぱり最初にどれだけのパワーを造れるかが重要になります。弱い風ではできるだけパワーが大きくなるようにドラフトを深くし、風が強い時はフラットに、そのヨットがフルセールで走れる最適なパワー造りを目指します。と言っても、過ぎる事もあるし、風も変化しますので、リーチで風を逃がしたりして調整できます。それでも過ぎる風なら、最後の手はセール面積を減らすリーフという手段になります。

と言っても、そう簡単に理想的にとは行きません。パワー調整を厳密に行うのは難しいので、取りあえず、バックステーとアウトホールを緩め、中間、強めとかに分けて、その時の風で三段階で調整してみて、実際の走りの中で、実際の風速との関係を見ながら、調整していけば良いかと思います。その為には、やはり風向風速計とスピード計は欲しい。もちろんん、ヒール計もあった方が良いと思います。明確に目で確認できますから。何ノットの風でどの程度のドラフト調整にしたかで、自分のヨットがどの程度ヒールするのかとかが解りますし、その時のボートスピードも確認できます。最初は大雑把から始めて、まずはそれを楽しめば良いと思います。

何か面倒くさい様に思えるかもしれませんが、ここでちゃんとやっておくと、今後のセーリングが何となくの適当じゃ無くて、より洗練された調整ができるようになりますし、第一、セーリングがより解り、自分のヨットの性能も解ってくる。そうなるともっと面白くなると思いますし、それに、セールフィーリングとして良くなると思います。これぞまさしくセーリングなのではないでしょうか。

        

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