第十五話 陸と海



      
この二つは単に陸と海というフィールドの違いではありません。陸上では我々の普段の生活があり、そこには当然いろんな事がある。でも、海に出るとそこには陸での事が一切ありません。いわゆる別世界です。まずは、セーリングがどうこうという前に、その別世界に出たという事を大切にしておきたいと思います。

何をするかといつも考えますが、自分の置かれた状態が全く一新したという状態をまずは最初に味わっておきます。という事は、陸上の全てを忘れて、この時ばかりは、海に浸る。陸上での価値観も忘れます。だから、海というもうひとつの世界を純粋に味わいます。もう、それだけでも、ヨットで海に出た価値が、本当はあるんだろうと思います。

そのうえでセーリングを味わいます。速く走らせたい。その為に知識や技術を身に付けます。しかし、それらは、速く走らせる為だけでは無く、様々なセーリングの味わいをより良く味わう為だと思います。スピードもそのひとつ、でも、ゆっくりでも、その時の状態を楽しめるようになれればもっと良いと思います。所詮は風次第なのですから。それで、知識と技術が役に立つ。

この際、セーリング中は、波の音、風の音や顔に当たる感じ、周りの海の様子や、いろんな事を感じながら、そのうえでセーリングを堪能できればと思います。海という世界全体を味わいに海に出る。その手段としてセーリングがあります。自然を味わう為にセーリングをします。その自然をより良く味わうには、やはり知識と技術があった方が良いという事になります。そして、知識と技術が高まれば、それに伴って感性も磨かれていくと思います。

その時の風で、自分ができる事して、それが何ノットだったかという事より、その時のセーリングを充分に味わう事が重要なのではなかろうか? 海は幸いにも、いつも変化しています。その変化をしっかり味わいたいと思います。

そして、それらのベースがヨットの性能という事になると思います。セーリングの味わいはそのヨットに負う処も少なくありません。だから、排水量、セール面積、安定性、船体剛性等々を検討致します。しかし、ヨット選択の基本は好きなヨットである事だと思いますね。理屈を超えた好き嫌いは、自分自身の本音を表しているのではなかろうか? 気に入るというのは、もちろん、見かけのデザインもありますが、意識せずとも、そのコンセプトさえも含めて見ているのではないかと思います。

        

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