第四十話 メインテナンスをも楽しめる


      

メインテナンスの重要性は言うまでもありません。それは壊れたら修理したり、交換したりするという当たり前の話では無く、より良い状態を作り、それを維持し、さらに進化させる事だと思います。たとえ、それが新艇であったとしても、それで完成という事では無く、90%ぐらいと考える。未完成です。それを完成に近づけていく。海外ではそれをシェイクダウンと言いますが、この整備はヨットだけに留まらず、自分のセーリングを進化させていくという意味でもあると思います。メインテナンスは決して煩わしい事では無く、考え様によってはそれを楽しんでいける。

この面白い処は、ヨットの整備と自分のセーリングが共に進化していく事です。このふたつは決して別々に分かれて存在するわけじゃない。これが分離してしまうと、メインテナンスはただの厄介な行為になってしまう。メインテナンスは修理に留まらず、こうしたらもっと使い易くなるという事も含んでいます。

メインテナンスの条件は自分のヨットに気が付くという事から始まります。気が付かないと整備のしようがありません。乗って、もっとこうできたらとか考えます。或いは、これまでの感覚から違和感を感じる事もあるかもしれません。それを整備していきます。時に、業者に依頼する事もありますが、業者は依頼内容しかやりません。それでも良いのは、オーナーが全体を解っている場合です。

乗って、整備して、また乗っての繰り返し。それが面白さでもあります。その繰り返しはヨットの進化と共に自分のセーリングの進化でもありますから、自分が解っていくという感覚があります。メインテナンスは、ヨットの整備と自分のセールフィーリングの整備でもある。だから、微妙な変化さえも気が付けるようになる。人の感覚は案外鋭いもんです。

解っていくと面白くなります。自分のヨットが解る。セーリングが解る。感覚が解る。だから整備も面白さのひとつとして捉えるようになっていく。これら全部を含めてヨットライフなんじゃないでしょうか。自分も進化していきますから、ヨットは常に未完成です。だから飽きないんですね。完成したと思ったら終わりです。メインテナンスさえも楽しめる様になったら、そのヨットは本当の意味で自分のものになったと言えるのかもしれません。

次へ       目次へ