第五十五話 非日常の薦め


      

非日常を求めたはずですが、無意識のうちにと言いますか、いつもの癖で、楽が良い、便利が良い、広い方が良い、と日常の常識をそのままヨットに持ち込んで、でっかいキャビンにエアコン積んで、蛇口を捻ればお湯が出て、冷蔵庫だ電子レンジだとフル装備に囲まれて、気が付いてみると、これじゃ日常の家と変わら無い。だからマリーナに行っても非日常性を感じられなくなった。

それは求めた事が間違いだったんじゃないか? そのせいでセーリングという非日常さえも面倒くさくなった。もし、そうなら根本から見直す必要がある。もし、そこに住むなら便利で楽が良いが、別に住もうという話じゃないんですから。

日常は便利で楽を求める。それが今日の発展をもたらしてきた。それが日常なら、少し不便を楽しんでみる。それには少しぐらいの工夫が必要になるが、それがまた面白さになる。もちろん程度問題はあるが、少しだけ不便を敢えて味わってみる。耐えるのではなく、それを面白がる気持ちが必要だと思います。

誰だって、広いキャビンでゆったり寝たい。セーリングだって、ボタンひとつが楽で良い。でも、寝袋で寝たり、ちょっと舵でアシストして楽にウィンチを巻いたりする事もできる。そういうちょっとした工夫が面白さなんじゃなかろうか?ヨットには日常を持ち込まなければ、非日常がある。非日常にちょっと工夫して楽しむ。そういうヨットライフの方が面白いのではなかろうか?

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