第八十九話 スポーツ性


      

セーリングにスポーツ性を見出してくるとキャビンに対する価値観が変わって行く。キャビンを重視すると重くなるし、それはそのままセーリング性能に跳ね返ってくる。だからスポーツ性を重視するヨットはキャビンをシンプル化し、尚且つ、船体を軽く造るよう努力する。それはレースの為じゃない、セーリングを楽しむ為だ。

セール面積を大きくするよりも排水量を軽くした方が遥かにパフォーマンスに与える影響は大きい。30フィートクラスのクルージング艇とデイセーラーを比較すると、今時のクルージング艇の排水量は4t代の後半になり昔より重くなった。その代わりキャビンの充実度は高い。一方、デイセーラーは3t以下。その結果、クルージング艇のセールより小さいにも拘わらず、パフォーマンスはクルージング艇を凌ぐ。という事はセールが小さい分取り扱いもし易いという事になる。

デイセーラーはレーサーとは違ってジブセールを交換したりしないし、もちろんファーリングを使う。それもセルフタッキングジブ。それに、ジェネカーを入れても3枚。クルーも居なくても構わない。それで快適セーリングを楽しめる。家族や仲間と楽しむ時、これまではキャビンを重視してきたかもしれない。しかし、本当にそれで良いんだろうか?今日の稼働率の低下を考えると、自分自身や家族、仲間を楽しませるに快適キャビンが効果的なんだろうか?

誰でもスポーツマインドを持っている。ヒールして快走するスピード感にグッドフィーリングを感じた事は誰でもある。その快走フィーリングは同乗者にとっても同じ事。だったら、そのグッドフィーリングの幅をもっと広げたらどうだろうか?快適キャビンも良いかもしれないが、自分の為、家族や仲間の為にも、ヨットでしか味わえないグッドフィーリング、グッドセーリングを考えてみてはどうだろうか?



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