第九十一話 デイセーラーの分類と特徴


      

デイセーラーは世界共通、しかし、ヨーロッパとアメリカでは少し異なる処がある。ヨーロッパにおけるデイセーラーのはしりは多分ブレンタ氏デザインのB38だろう。その後のヨーロッパデイセーラーは多分にこの影響を受けている様に見える。そして、この後、クラシックデザインが生まれ、さらにモダンとクラシックの融合的なデザインも生まれてきた。

一方、アメリカではヨーロッパの様なモダンデザインは見られない。アメリカンデザインはクラシック系ばかり、それもヨーロッパのクラシックデザインと違い、アメリカントラディショナルというクラシック系ではあるが、やっぱりヨーロッパとは少し違う。こちらは有名なデザイナー、ハーショフ氏の影響が強い。今日のデイセーラー誕生としてはこちらが先でもある。

デザインは様々ではあるが、仕様コンセプトとしては全て同じで、シングルハンドによる自由自在セーリングを目指す。舵を持ちながら他の操作ができるし、大きなサイズになるとパワーアシストが設定されている。

スピード的にはモダンデザインが最も速く、見るからにそう見えるが、クラシック系はそれに比べると少し排水量が重くなり、水線長もそのデザインから少し短くもなるが、それらはクラシックデザインとしての美しさの特徴でもある。しかし、そのクラシック系にしてもパフォーマンスは高い。そして、モダン/クラシック系はその中間に位置している。とっても解り易い分類です。いずれも、水線以下はモダンデザインとなっているのが、全てのデイセーラーの特徴でもある。

さて、もうひとつ面白い特徴がある。アメリカから今日のデイセーラーが誕生して約20年以上を経過してきたが、まずはアメリカで火がつき、それがヨーロッパに渡り、超ハイパフォーマンスも出てきたし、60フィートオーバーのサイズも生まれてきた。面白い事に、この発展は一般的に見られる新しいデザインが既存のデザインを駆逐する事が起きていない。新しいデザインが次々に生まれてくるものの、初期のデザインが今でも活躍しているし、いまだに人気が高い。こういう現象は他のジャンルでは見られない。

つまり、デイセーラーに関して言えば、より速いのが良いとか、あるデザインは流行ったりとか、そういう共通価値基準が無く、見た目のデザインにしてもクラシックからモダンまで、また、サイズにおいても様々なバリエーションが同時に存在し、時間の経過を超越している。より新しいものがより良いという考え方では無い。新しいデイセーラーが出現したら、それはひとつの新しい個性が生まれたと捉えるのが正しい様に思える。

デイセーラーの選択基準は各人独自の価値観によって選択され、好みのデザイン、好みのパフォーマンス、好みのサイズとして決定され、新しいデザインかどうかは選択の基準にはならない。一般的には新しいデザインは既存のデザインを古く、劣って見せ、駆逐していく傾向にあるが、デイセーラーにはそういう事が無い。20年前のデザインと今のデザインと、見た目もパフォーマンスも異なるが、どっちが優れているという事では無く各人の好みの違いによってのみ選択される。つまり、新しい、古いというという捉え方では無い。



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