第28話 格好良くのろう

どんな分野の事であろうと、良い物は美しいし、熟練した動きは美しいものです。無駄の無い
動きや滑らかな動きはシンプルであると同時に美しい。昔は初心者がヨットを覚えるのに、20
フィート前後から始めたものです。でも、今やいきなり30フィートも珍しくありません。それどこ
ろか、さらにエスカレートし、35フィートや40フィートという方々もおられます。でも、もう一度、
考え直して、できれば全ての人が小型ヨットでセーリングをマスターして、それからステップアッ
プされていくと良いのではないかと思います。

小型ヨットは大きなヨットに比べると、風や波の影響をを受けやすい。危険という意味ではありま
せん。それだけにセールの対応が敏感と考えても良いでしょう。そういう意味ではヨットを覚える
のには都合が良い。覚えるというのは理屈を覚えるだけでは無く、体が覚えるのです。そうする
と動きは滑らかになり、無駄も無くなり、美しい動きになる。こうやって覚えたセーリングは、後々
のステップアップした時にもおおいに役立つと思うのです。

大きなヨットは楽だと言いますが、外洋を走るロングクルージングじゃあるまいし、デイセーリング
なら、かえってその方がヨットの醍醐味を味わえるというものです。そして、ヨットのどんな部分が
どうであった方が良いのか、体で解るようになる。

復元性の小さなヨットは、すぐにヒールしてしまう。波をかぶりやすいヨットもあれば、その逆もある。
ティラーを持つ手には敏感に波が感じられる。格好良く乗るには、ヨットを体で覚えることです。

一般にロングキールのヨットは乗りにくいといわれます。でも、あるオーナーは見事に乗りこなす。
ロングキールの特性を良く知り、風に逆らわず、うまく利用しながら、狭いハーバーを縫っていく。
その滑らかさは実に格好良い。慣れればどおって事ないよと言われますが、慣れる前にあきらめる
方の多い事。考えてみれば、誰もが車を運転します。そして実にスムースです。手と足の動き、それ
に、行き交う人々や多くの車を体で判断しながら、実に滑らかです。これに比べたら、ヨットは経験
が少ないだけで、車よりはるかに容易なのではないでしょうか。人は歩いて無いし、突然飛び出して
くる物があるわけでも無い。見通しは良いし、行き交う物も少ない。車があれだけ自由自在に運転で
きるなら、誰でもヨットは気楽に運転できるはずなのです。後、必要な事は経験です。そして体で覚え
る事です。

一旦、体で覚えたセーリングは、心に余裕ができる。余裕ができればできる程、感じる事ができる。
波や風の変化、それに対するヨットの変化、そういう事を感じる気持ちが余裕ですから、それが一杯
ある方が良い。ヨットは感じる為に乗る。その為にはスムースである程良い。その動きはビューティフル
なのです。

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