第40話 目的と手段

ヨットは買う為にあるのだろうか?それとも乗る為にあるのだろうか?自分にとって最高の
ヨットを手に入れて、それを愛でるのも良いかもしれない。しかしながら、いつも手入れして
ピカピカに磨くだけでは、そうは面白く無い。何故なら、ヨットを自分の家に飾るなら別だが
遠く離れた場所においておくとなると、満足できる物ではない。ヨットはあくまで買うのが目
的では無いはずだ。ヨットは手段であって、目的では無い。

目的は海に出る事、セーリングする事、島に渡る事、レースをする事、住まう為、どんな目的
でも構いはしないが、いずれにせよ目的は行動を伴う。そして、行動から得られるのは感覚
である。つまりは、最終目的はどんな感覚を得られるか、得たいのかという事になろう。そして、
期待した感覚がえられなかった時、ヨット離れが始まる。

何故、期待した感覚を得られないのだろうか。期待は頭で想像した感覚だから、想像と実際は
異なることもある。期待をせずに、行動からどんな感覚が来るか、発見したらどうだろうか。発見
する事を目的としたらどうだろう。その気になれば、誰でも発見する事ができる。その為にはどん
なヨットが必要かと思う前に、今あるヨットで、今手に入れられるヨットで、自分を真っ白にして、
ただ、何も考えずに出る事が一番良いと思う。

魚の群れを発見した。それを追って大きな魚が突進するのを発見した。きれいな水を発見した。
風がここらあたりで強くなるのを発見した。回っているのを発見した。自分のヨットの上り角度を
発見した。強い風を弱い風を、その時どうなるかを発見した。真剣に走ると、以外に良く走って
くれるのを発見した。シートを引いたら、セールは変化して、それに合わせてセーリングが変わる
事を発見した。潮の流れを発見し、空気の流れを発見し、温度を発見し、退屈さを、スリルを、
滑らかさを、ぎこちなさを、恐怖を、エキサイティングな走りを、暗礁を、暑さを、寒さを発見した。
それら多くの発見から、さらに自分をが何を感じたかを発見する。その中にはもう結構というのも
あるだろう。もっとというのもあるだろう。多くの発見をすればするほど、自分が求めているものの
感覚がわかる。これは頭で想像したものでは無い。だから、確かな感覚です。その中で最も気に
入った発見をもっともっと味わう事です。その為にどうしたら良いのか。

釣りが何故これだけ流行るのか?それは釣れた感覚を知っているからです。どんな感覚を得たい
のか、その目的がはっきりしている。だから、釣れなくても、釣れなくても、何度もトライできる。そ
れだけ、釣りの感覚は人を魅了しています。ヨットでも同じ事です。どんな感覚を得たいのかを、
まずは多くの発見から、体感してみてはどうでしょう。そして、その中から最も得たい感覚を発見し
感じることが先決です。それさえ感じれば、ヨットは最高の手段となります。

目的を達成する為の手段であるヨットは、進路さえわかれば、その目的の為に最も相応しい物が
解る。そうすると、それ以外の部分ではどうでも良くなるのです。そうすればヨットはシンプルで良い。
目的が明確であれば、手段はおのずと解ってくる。

まずは、何も考えず、何も期待せずに、ただ海に出ること、多くを発見する事、感じることが大切です。
寒い時に出よう。暑い時に出よう。程よい時、ちょっと風が強い時、一人で、二人で、大勢で、上ったり
下ったり、アンカー打ったり、料理を作ってみたり、メインだけで、ジブだけで、あらゆる物を動かして、
泊まったり、夜間航行してみたり、エンジンで走ったり、思いついた事を全部やってみましょう。きっと、
その中に最高のフィーリングが得られる時が来る。それが私自身です。それからは、ただそれをもっと
求めれば良い。深く求めれば良い。

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