第八十一話 道具


      

ヨットは道具に過ぎませんが、道具は大事ですよね。職人が目的に合った良い道具を大事に長年使う。使う度に自分にフィットしていく。それと同じではなかろうか?クルージング目的ならクルージング艇、レース目的ならレース艇、セーリング目的ならデイセーラーという具合。それぞれの目的に合う良いヨット。

メインテナンス屋さんに聞くと、良い仕事するには確かに腕は大事だけれど、道具が物を言うとか。まだ未熟だとしても、良い道具を使い続けると腕も上がっていく。腕のある職人は道具の良さが解るから大事にもする。良い道具と良い腕、両方揃うともっと良い仕事ができる。

人と道具の関係は、どこの世界でも同じでは無かろうか?腕があろうが未熟だろうが、良い道具を使った方が良い。良い道具は一生物です。

セーリング目的ならレーティングは関係無い。キャビンも重要では無い。だから、よりセーリングに特化してデザインし建造する。セーリングの難しい処は、スピードオンリーじゃ無い処です。ある意味スピードのみ重視なら難しく無い。今時はコンピューターが計算してくれる。でも、実際は人間が乗るものだから、デイセーラーなら乗り心地とか、美しさとか、安定感とか、操作感やコクピットに座った感じとか、実に様々な要素が盛り込まれる。感性は計算しきれない。

さらに、長年乗り続けるという前提なら、メインテナンスがし易いかどうかも重要になってくる。使い捨てじゃないんだから。でも、最近のは、後のメインテナンスなんか考慮していないのか?と思える様なヨットも少なく無い。これなんかは競争社会の弊害ではなかろうか?そういう見えない部分は削られる。でも、そういう競争の激しい現代社会でも、やはり、良い道具は長年使うという事を前提に建造され続けている。そこに多少なりとも安堵感を覚えます。

昨今、まだ少ないが、大きなヨットが徐々に増えている様です。でも、大きなサイズより、サイズを落としてでも、中古にしてでも、良い道具にしたいと思います。良いヨットはオーナーの味方になってくれるし、助けてくれるし、腕も感性も磨いてくれます。そうすると、初めっから違ってきます。良いヨットに良い腕が揃ったら、最強ですね。

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