第八十三話 ヨット再考の時期


      

ある調査に寄ると、ヨットやボートの稼働率、この場合は桟橋から出ていく稼働率ですが、一年間で一艇あたり、平均たった3日間なんだそうです。これはしょっちゅう動く少数と、全く動かない多数が存在する。それでも、マリーナには平日でも人がうじゃうじゃ居る。海外の話ですが。これはどうした事か?

つまり、マリーナはホリデイリゾート地と化し、ヨットやボートを動かさ無いで、そこで楽しむ事が主流となってきた。そこで、マリーナはリゾート地としてのサービスを進めているらしい。成程、でかいキャビンが重宝されるわけだ。別荘なんですね、動く必要も無い、性能なんてどうでも良い。装備さえあれば良い。

何も最初からそのつもりでヨットを購入しようとしたわけでは無く、結果的にそうなってしまった。何故だろうか?想像ですが、今日のクルージング艇、特に沿岸用のクルージング艇が、サイズの割にボリュームがでかくなり過ぎた。お陰で、快適なキャビンとなったが、出し入れが面倒になったのでは無かろうか?それにスラスターを設置したところで、ボリュームから来る圧倒感は変わらない。当然、排水量も重くなった。そうこうしているうちに、動かす回数が少なくなっていく。

日本でも稼働率は似た様なものかもしれない。但し、海外と決定的に違うのは、別荘としての使用率も非常に低いのではなかろうか?それはヨットのせいだけでは無く、マリーナの在り方にもある様な気がします。マリーナはそこに居るだけで楽しめるのか?

ところで、海外ではこれとは逆の動きも出てきており、そういう別荘的ヨットやマリーナに縛られる事を嫌い、ヨットを家としてでは無く、気軽な乗り物として捉え、週末にセーリングやピクニック、レースなんかを楽しみ、長期の休みとかになると、他のリゾート地にも行きたいし、他にしたい事もある。そういう方々が、でっかいヨットから動くヨットへ移っていくという傾向も一方ではある。

それはセーリングが面白い事、ある程度以上の性能があり、出し入れもし易い事。最もそれに匹敵するのがデイセーラーであり、デイセーラーが売れている要因のひとつでもある。もし、そこまで割り切れないとしたら、ハイパフォーマンスクルーザー、別の呼称はレーサークルーザーがある。ボリュームとしては沿岸クルージング艇程ボリュームはでかく無いし、速いし、反応も良いから、操船していて面白さが違う。舵のフィーリングなんか全然違って来る。走って面白いのです。それに、船体剛性が高いので、セーリングが波に負けず、滑らかさを感じます。もちろん、バルクヘッドや内装家具類も船体に接着では無く、積層されて船体剛性を高めている。

昔々、多くの方々がレースなるものを楽しんだ。当時、クルーにも事欠かなかった。それがやがて、これからはクルージング艇だ言われるようになり、そしてさらに、その次の段階に来ているのかもしれません。それがセーリングを楽しむ事になるのではなかろうか?デイセーラーであれ、何であれ、気軽にセーリングを楽しむ事。そのうえで、各人がしたい事をすれば良い。

という事で、当社ではデイセーラーか、又は、スウェーデンのアルコナヨットをお薦めしています。実は、アルコナヨットはハイパフォーマンスでありながら、外洋性もある。波高7m、風速ビュフォート10(風速48〜55ノット)において、5日間以上単独走行できるという規格なのです。写真はアルコナ340(実質ハル長)、最新のバキュームインフュージョン工法だし、排水量もこのサイズで5.2t と軽い。34フィートありながら、沿岸クルージング艇の30フィートクラス程度の重さです。同じ34フィート(ハル長)の沿岸用なら、もう1,000kgぐらい重い。アルコナ340のSADRは22.6、やっぱりヨットは走らせるのが楽しいし、面白いと思います。と言う事で、ヨットの使い方を再考する時に来ているのではなかろうか? と思う次第です。


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