第七十七話 旅という固定観念を捨ててみる


      

デイセーラーをモデルみたいな美人と例えるなら、クルージング艇はもっと家庭的で暖かくて頼もしい感じかな?体重は重めだがダイエットは必要無いし、むしろしない方が良い。キャビンはオーナーを暖かく迎えてくれて外界から守ってくれます。そして、クルージング艇は旅するものというのが常識だけれど、キャビンを主役としたっていいじゃ無いか。クルージング艇は別荘となる。



セーリングして帰って来るだけならデイセーラーの方が絶対面白い。それにお茶ぐらいデイセーラーでも十分だし、また、沿岸の旅ならデイセーラーでも出来る。泊はホテルを利用しても良い(もちろん船中泊もできますが)。でも、クルージング艇のキャビンの快適さには全く敵わない。ならば、その特徴を活かしてキャビンライフを中心にヨットライフを組み立てても良いかもしれない。この際セーリングは従で良い。旅をするからキャビンが必要になると考える事もできるが、キャビンライフをより楽しむ為にセーリングや旅があると考える事もできる。

ところで、一般的ないわゆる別荘地帯は閑古鳥が鳴いている様です。やっぱり、のんびりばかりでは退屈になもなる。しかし、もし、その別荘が海辺にあって、目の前の桟橋にヨットがあってセーリングを楽しめるとしたらどうだろう?それなら、別荘をもっと楽しめるようにできるのでは無かろうか?そして、クルージング艇にはこの両方がある。別荘とセーリングの両方が同時にくっついているわけです。

これまでキャビンは宴会する場程度しか考えて来なかった。それをもっと使える方法は無いだろうか?そこの充実を考えて、その合間にセーリングをしても良い。セーリングとキャビンの逆転、セーリングを従としてキャビンを主とする使い方です。

最初から別荘として泊まりに行くとすると、気持が違います。時間を気にする事も無い。それで気が向いたらセーリングして、アフターセリングこそがお楽しみ。アフターセーリングにそそくさと家路に急ぐなんて必要も無い。まして、セーリングしなければならないわけじゃないが、そういう時間と気持ちの使い方です。キャビンが主ならセーリングは返って気軽にできる。だってヨットはセーリングしなければならないなんて思ってないから。

また、数年したら、いつも同じ場所ではつまらないと変化を求める気持ちが出て来たら、どこかに移動するわけだが、これは旅をするチャンス。移動後は気分新たにキャビンライフが楽しめる。まさしく動く別荘なのです。そこからゴルフしに行っても良いし、温泉に行っても良いし、何しろ別荘なのですから。もちろんデイセーリングも楽しめる。

最初からこの様に考えると、キャビンを充実させ、より快適キャビンライフになるよう工夫もします。もし、陸電が取れるなら、エアコン設置しても良い(発電機は煩い)。冷蔵庫つけっぱなしでもバッテリーに問題は無いし、テレビもビデオも音楽も何でも有り。まさしく動く別荘としての使い方を考える。クルージングに囚われてるからキャビンも使えない。



最近のクルージング艇のキャビンはとっても広くなりました。真ん中の写真は27フィート、このすぐ上の写真は28フィート、充分だと思いませんか?

セーリング好きはセーリングが中心となり、旅好きは旅が中心となる。でも、キャビン中心にしたらどういう可能性があるだろうか?春が来たらヨットに泊まりに行ってみませんか?そしてキャビンの可能性を考えてみるのも手かな?あるオーナーは音楽好きでリスニングルームとして使っていた。良くコーヒーをご馳走してくれてご自慢のステレオを鳴らしてくれたものです。またある方は書斎みたいな感じにして使っていたり、楽器練習の場として使っていた人も居た。でも、いずれも心は、ヨットはクルージングするもんだという気持ちがあったと思います。この際、そんなしばりを捨てて、キャビンライフを楽しむとしても良いんじゃ無かろうか?気が向いた時だけセーリングしても良い。自由にあらゆる可能性を探ってみるのも良いかと思います。

ヨットである限り、セーリングするものと思って来ましたが、でも、クルージング艇なら別荘にしても良いし、欧米では既にそういう使い方が多い。そう考えられると、例えば、ヨットなら手元に置いておきたいが、別荘ならどこか気に入った遠い場所でも構わないと思えて来る。むしろ、その方が楽しめそうです。しかも、そこでもセーリングの可能性も持っています。使い方の固定観念はそろそろ捨てた方が良さそうです。

旅としてのクルージング艇もあれば別荘としてのクルージング艇もある。それで、後者は動く別荘としてキャビンヨットと呼ぶ事にしましょう。使い方の違いによる呼称の違いです。

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