第九十二話 これからはデイセーラー

      


大きなヨットが増えてきた反面、シングルで乗れるヨットを求める方も増えてきた様に思います。その理由はそれぞれにいろんな理由があるのでしょうが、多いのはクルーが居なくなった事。クルーも各々事情がありますから、いつまでも同じ環境に居続ける事は難しい。さらにオーナーもクルーも高齢化していきます。そうなるとオーナーとしてはヨットをやめるか? 続ける意欲をお持ちの方はシングルでも気楽に乗れるヨットという事になるようです。

サイズ的に言えば30フィート前後、これは昔からひとつの区切りみたいな感じがしますが、ただ、今日の30フィートは昔と違って長さは同じでも高さ、幅、重量、みんなでかくなりました。よって、これをシングルというより、少し落として28フィートとかも需要が大きいです。実は近所をセーリングするも、近場への旅もこれで充分です。このサイズなら取り回しもしやすい。

それともうひとつの注目はやはりデイセーラーです。元々がシングル仕様で、ボリュームも大きくありません。人気は良いんですが、残念な事に中古のデイセーラーがありません。新艇となると今は強烈な円安で手が出しにくい。という事で、出たら教えて欲しいというメールは少なくなりません。

これらの事情を考えても、これからはでかいヨットか30フィートクルージング艇か、そしデイセーラーか。他が無いわけではありませんが、増加率、人気度という面で言えばそうなるかな?でかいヨットは電動化が進み、少人数でも容易に操作ができるようになってきましたし、デイセーラーは美しいデザインで気軽に快走をシングルで楽しめる。

過去を振り返ってみますと、いつかは30フィートという時代があり、みんなこのサイズに憧れたものです。それが徐々に普通になり、もっとでかいのが珍しくない時代になり、そこにクルージング艇以外の魅力をもって登場したのがデイセーラーです。海外では加えてノスタルジックな思いか木造でクラシックなワンデザインなんかも多い。要は、ヨットに対して求める要素が一様では無くなり各人の好みが明確に分かれてきたという事ではないかと思います。これぞヨット文化の発展と言えるかもしれません。

スピードを兎に角求める人も居れば、スピードはそこそこでも情緒的にヨットを捉える人も居ます。便利を追求する人も居て、敢えてマニュアルの操作感が良いという人も居る。発展途上の時はみんなが同じ方向に向いていたのが、進化がある程度のレベルに来ると価値観がばらけてくる。そうすると求めるヨットも違えば、使い方も違っていく。これまで、一様に求め、何かが違うのか多くのヨットが動いて来なかった。でも、これからは、自分独自の価値観を誰に遠慮する事無く求める時代(これは日本人には難しかった)に徐々にですがなっていくのではなかろうか?

大きいヨットも小さいヨットも、モダンもクラシックも、速いのも遅いのも、便利なのもそうでも無いのも、それぞれに魅力があり、自分がどこにどんな魅力を感じているかが最も重要で、それが素直に表現できた時、動かないヨットが少なくなっていくのではなかろうか?これまで、日本ではいろんな状況をくぐってきたわけで、ヨットが増えたり、少なくなったり、いろいろ経験してきましたが、これからは本当に自分スタイルが増えていくのでは?そう願います。その中のひとつとしてのお薦めがデイセーラーというわけです。

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