第三十七話 クルージング艇の使い道 

   
   

圧倒的に多いクルージング艇、その使い道はどうかと考えると、当然旅に出る事。しかしながら、そうしょっちゅうは旅に出てばかりは居られないとすると、近場での使い方をどうするか? ここがポイントではなかろうか?

もし、マリーナがリゾート地みたいなら、もし、近場にたくさんのレストランやその他等があってヨットで簡単に寄れるなら、もし近くに素敵な入り江がたくさんあって、そこでアンカー打って海水浴や一晩泊まってとかできるなら、これにピクニックセーリングを加えていろんな使い道ができます。

海外にはそういう処がたくさんあるかもしれないが、日本ではマリーナがリゾート地みたいで、そこで一日中楽しく、しかも何度も過ごせるだろうか? マリーナを出たらどこに行くか?島はたくさんある、それで寄れるのは漁港、そこの地の魚料理を楽しんだり、温泉を楽しんだりも悪くは無いが、あっちこっちにそうたくさんあるか? ましてしゃれたレストランなんかはそうは無い。また、近くに一晩過ごしたくなる様な美しい入り江はあるだろうか? そんな事を考えるとやれる事はピクニックセーリング程度という事になります。もちろん、恵まれた処もあるかもしれないが、そう多くは無い。

そうするとクルージング艇はどうやって過ごすのだろうか? 旅以外の大半は近場のピクニックという事になりはしないか?しかも、一応はセーリングするもセーリングそのものを楽しむわけでは無い。仲間と会話を楽しみ、飲み食いを楽しみ、その道中の海に浮かんでいる状態を楽しむ。それも悪くは無い。ただ、そういう事を毎回、何度も楽しめるのか?日本を取り巻く環境は海外とは違います。

だから、できるだけ環境の良いマリーナ、自宅から遠くても他県でもそういう環境を求める方法もあります。一部そういう事を実行している人も居ますが、一部です。実際、沖縄とかそういう場所に関東、関西のオーナー達が自艇を移す方もおられる。でも、実際は多くは無い。

とするなら、自宅の近くのマリーナに係留して、環境的にそういう遊び場が近くに無いとするなら、それで楽しむ方法はセーリングではないだろうか?海外の環境とは違うわけですから。しかも、そのセーリングはセーリングそのものをもっと楽しむ、ちょっとスポーツ的側面を考えて走らせる方が面白いのではなかろうか? だから、クルージング艇も内装や装備ばかりでは無く、便利ばかりでは無く、もっとセーリングをどう楽しむかを日常の乗り方として考えた方が良いのではなかろうか? そして、もちろん、時間が取れた時は時間の許す限り遠くへの旅も楽しめば良い。

これは日本においてクルージング艇の楽しみ方が海外とは違うだけで、セーリングはヨットの本来の軸となる機能です。それを存分楽しむという事は悪かろうはずがありません。旅とセーリングを楽しむ。これはクルージング艇の基本中の基本では無かろうか。


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