第二話 コースタルにおけるヨット

殆どの方々がこの範疇を考えておられると思います。キャビンも充実していて、ちょっと遠出
もしたい。できれば日本一周なんかもいつかはしてみたい。それで、今のヨットを見てみます
といくつかの点に気がつきます。

まず、何と言ってもキャビンが大きくなったきたことです。太ると体重が増えるのは世の常、と
ころが実際はそうでも無い。それで何が違うかと言いますと、バラスト重量が減ってきた。体格
は大きくなって、バラストが小さくなると、当然ながらトップヘビーになります。そうすると、ちょっと
ブローが吹くと、とたんに大きくヒールする事になります。それで、セールを小さくしてしまう。
まして、30フィート程度でメインファーラーなんかにすると、最もパワーの出るローチが取れない。
クルージング艇はセーリングよりキャビン重視の傾向にあるようです。クルージング艇はその辺
でアンカーでも打って、海水浴でもしてろ、とでも言うつもりなのか?

最近のデータではバラスト重量を記載していないのもある。バラスト比30%を切るのも珍しくは
無い。おまけにセール面積も何々平方メートルと書くだけで、設定したセールの面積をそのまま
記載しているのもある。本来なら、I、J、P、Eを記載して、それから計算できる面積で無いと、
セール面積が大きいのか小さいのか解らない。本当なら、皆、こういう計算をするべきなのです。
100%ジブで計算した場合と150%ジェノアの場合、比較するのがナンセンスなのです。
おまけに、ある造船所のヨットは全てを含んだ長さをそのまま何フィートと称している。32フィート
とあったが、良く見ると船体長は31フィートしか無い。本来なら船体長でフィート数を表示するのが
これまでやり方だったはずです。

さて、キャビン重視が悪いというのでは決してありません。好きなように乗って良いのです。好きな
ヨットで好きに遊べばそれで良い。でも、個人的には、クルージング艇であってもセーリングを楽し
むのが良いと思っています。その方がエキサイティングだからですし、セーリングが最もヨットの
魅力を教えてくれる。そういう観点からしますと、上記のようなヨットは気に入らないのです。レーサ
ーなら、大人数をサイドデッキに座らせて、錘にできますが、クルージングではそうは行かない。
まして、昨今のクルー不足ですから、ショートハンドです。ショートハンドのセーリングにはなおさら
重心は低い方が絶対に良い。ましてシングルならなおさらです。そうでなければ、他艇より早く、
リーフしなければならなくなる。それではせっかくのしびれるようなセーリングはできなくなる。しび
れる言いますが、そんなに無茶な事ではないんです。重心が低ければ、それだけ、セールの
風に対するキャパシティーが大きくなる。車なら、高馬力エンジンを積んだようなものです。レース
をしないと言っても、サーっと走った方が気持ち良いじゃないですか。

だいたいクルージングという事葉がいけません。何か、トロトロ走るような雰囲気がある。レースじゃ
ないからと言って、いつもゆたゆた走るんでは面白くは無い。漂ってるだけではすぐに飽きてしまう。
だからみんな乗らないんですかね。車ならすぐにスピード違反してますよ。ヨットだけは何故か、みな
さんゆったりモードなのです。たまには良い、でももっと帆走を楽しんだら良いと思いますよ。

それでショートハンドでセーリングを楽しむには、やはりメインセールトラックがコクピットに合った方が
良い。ブームの中央で引くには相当の力が必要ですから、ウィンチを使わないと引けないことも多い。
でも、ブームエンドから引くと、力はあまり要りません。てこの原理ですよね。それにさっと出せて、さっ
と引ける。ヘルムスマンが舵を持ったままシートの出し入れができる。もう一人がジブシートを出し入れ
すれば良い。それにメインシートトラックがキャビン天井の上だと、トラックの左右の移動もあまりしなく
なる。バックステーアジャスターも無いし、ジブシートトラックの位置も動かさない。そうやって、楽をしな
がら、退屈なセーリングは飽きてくる。

それでコースタルヨットには、メインセールトラックはコクピットに設置して、バックッステーアジャスター
をつけて、30フィートぐらいならメインファーラーにせずに、どうしてもと言うならブームファーリングにする。
フルバテンにできるし、ローチも取れる。船体構造は低めで、バラストは大きく、そういうヨットが良いな
と思います。例えこういう仕様でも、キャビンは充分充実していますよ。ちゃんとキャビンライフも楽しめ
ます。トラックがコクピットにあったら邪魔?でも、セーリングの面白さとどっちが良いですか?後はシングル
でどうやって乗るか、ダブルハンドなら、3人なら、そこを考えます。でも、2人居ればたいていはOKです。

レーサーだから、クルージングだから、こんな事にこだわり過ぎませんか?どちらにしてヨットです。ヨット
はセーリングするものです。それじゃ、セーリングを多いに楽しもうじゃありませんか。そうしたからと言って
キャビンが無くなるわけでは無い。バースもあれば、トイレもギャレーもあるし、それでも充分天井の高さ
も確保できてる。コースタルは沿岸ですが、デイセーリングからウィークエンドセーリングまでも含む乗り方
です。それにキャビンライフがもう少し追加になった。それだけです。セーリングが面白いに越した事は無い。

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