第二十二話 あるオーナー

最近、二人のオーナーが乗り方を変えると話されていました。どちらもクルージング
艇をお持ちなのですが、考えてみれば今年は3回しか出さなかったとか。結局、
もっと気軽なセーリングを楽しみたいと言われてました。船内にはいろんな装備が
ある。でも、結局使わない。使うのが面倒です。ガスコンロがあっても、カセットコンロ
を使う。シャワーも使わないし、どこか行った時は風呂屋を探して、行く。それで重装
備な艤装は不要だし、それより、もっと簡素化して、気軽にセーリングに出た方が
面白いという事がわかってきた。これから,セーリングについてもっと勉強して、セー
ルのトリミングもしたいし、スムースな走りも経験したい。スピンは無理でもジェネカー
上げて、面白いセーリングを目指しますという事でした。

考えてみれば、少ない回数しか出さなかったが、気持ち良く走った時は本当に面白い
し、キャビンで寝るなんて使い方もするが、そんなにたいそうな重装備は要らない。逆
に無い方がスッキリするし、何より気持ちが軽くなる。そんなお話です。

大賛成ですね。もっと気軽にヨットに接する気持ちは大切だと思います。その為に、どう
いうヨットが良いか、そう考える。そうしたら、冷静に見れば、ヨットに必要だと思ってきた
装備が、本当は要らなかったという事が良くわかります。

電動のプレッシャーポンプで清水を使う。これさえも、フットポンプがあるので、こちらの
方がてっとり早い。バウバースは荷物置きになってるし、メインサロンのソファーで昼寝
する。冷蔵庫はエンジン回さないとバッテリーが心配だし、それに朝来てスイッチ入れて
も冷えない。今はカセットのガスで冷やせる冷蔵庫があるし、冷凍庫だってある。こちら
の方が安心です。

あれも、これも要らないというと、オーナーの夢を壊すような事になるかもしれませんが、
夢はセーリングに持っていただきたい。シンプルな装備だが、気軽な気持ちがあり、セー
リングをスムースにやろうとする気持ちがあり、それを実行する為にいろんな事を試し、
それを経験していく。そういう心構えが、素晴らしいヨット体験を生みます。

確かに、あれば便利な物がたくさんあります。でも、どう便利になるのかを考えた方が良
い。そして実際使うのかという事です。だいたいあればと思うのはヨットで生活するには
便利という物が多い。でも生活なんかしないんですから、使えば便利かもしれないが、
あるだけでは、今度は邪魔になる。多くの物が空間を占めると、それに比例して、気持ち
が重くなる。気軽には出せません。それより、必要な物だけがあって、スッキリしている
と気持ちも軽い。だから、今出せたら良いセーリングができるだろうな、と思う時、スーっと
出せるのが良いのです。2、3時間走ってきたら良い。

ある方は最近セルフタッキングジブにされました。楽になった分、メインのトリミングに気を
使われます。舵に気を使われます。微妙は感覚を感じ取り、非常に楽しんでおられます。
全てに気を配って、何でもやりとげる。それができれば良いかもしれませんが、そうはいか
んのです。できるだけ楽にして、そしてセーリングをどう操作するか、その操作した分を充分
感じ取ります。これが最高のフィーリングを与えてくれます。

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