第三十四話 燃料系統とエンジン

燃料タンクには燃料を入れるパイプ、エアー抜き、燃料計のセンサー、センサーと言っても
簡単な仕掛けで、フロートがついたアームが燃料の水面に浮きますので、その角度で量
を測っています。時折、この動きが悪くなって正確な量を示さない時があります。留めて
あるネジを緩めて、現物を見てみればすぐにわかる簡単な物です。それからエンジンへ
燃料を供給するパイプとエンジンから余りの燃料が戻ってきますので、その戻りのパイプ。
こんなところです。見れば誰でもすぐに解ります。

デッキから燃料を注ぎますが、時折、デッキの蓋のゴムパッキンの劣化によって、雨水が
タンクに浸入する場合がありますので、要注意。たいてい、エンジンに入る前にウォーター
セパレーターがついていますので、これで燃料から水を分離、これが溜まると下側の透明
容器に水が溜まる。水は油と分離しますから、分離したラインが見える。溜まったら、水抜き
をしておく。エンジンに入る前に燃料フィルターを通過し、エンジンに行く。そして、エンジンから
あまった燃料がタンクに戻る。これだけです。各パイプが何なのかをチェック、ジョイント部分は
漏れの可能性もある。つまり燃料が漏れた時はジョイント部をチェックすれば良い。漏れを知る
為にはエンジンルームはいつもきれいにしておく必要があります。エンジンもです。そうすれば
漏れた時はすぐに解ります。すぐにわかれば対処はたやすい。初期治療がなによりです。

さて、燃料に関するトラブルで多いのは、タンクの汚れでしょう。車と違って毎日は使わない。
古い燃料が長くタンク内に残ります。これが積み重なって、タンク内は汚れ、それがタンク内に
堆積します。フィルターがあるからと思われるかもしれませんが、そうはとんやがおろさない。
タンク内の燃料の吸い込み口に堆積していた異物が蓋をするような格好で詰まらせる事も珍し
くはありません。エンジンで走りながら、エンジンの回転が時折下がったりする場合は燃料系
統が疑わしい。ひどければ、エンジンが停止してしまいます。しばらくすると、ごみが落ちて、
エンジンがまたかかる。ところがしばらくするとまた止まる。こういう事になります。ごみの詰まり
具合によっては時間がたってもエンジンがかからない場合もある。こういう時はホースバンドを
はずして、そこから灯油を入れる時に使うシュポシュポとやるポンプを繋いで、エアーを吹きつけ
ごみを落とす。するとたいていかかります。ポンプが無い場合は、口で息を吹きつける。
これでも駄目な場合、ごみの詰まりで燃料が来ない為、吸引力がありますので、ジョイント部分
からエアーを吸い込む場合もある。その場合はエンジンのエアー抜きをします。もちろん、簡単
に出来る事から順番にチェック、ウォーターセパレーターの汚れをチェック、汚れていればフィル
ターを燃料で洗う。

そもそも、タンクの汚れ、古いヨットは要注意です。ところが、燃料タンクは外から洗えるようには
なっていない。まして、タンク上部には何かがあって手が入らないこういう艇も多いです。ですか
ら完全に洗うという事がなかなかできない。タンク内は時化た時に内部の燃料が暴れるので、
仕切りがあります。ですから、なかなかきれいにするのは難しいのですが、タンクの燃料を全て
ポンプで吸出し、入れ替えを何度もするか、とにかく、できるだけゴミを取らなければなりません。
たまに、燃料の吸い口に網状のネットがついている物がありますが、ゴミを通過させないつもり
でしょうが、これはいけません。かえってゴミが詰まりやすくなります。しかもパイプは細い。
つまり、燃料系統を良く知り、知れば対応の仕方もわかってきます。

それから、たまにですがウォーターセパレーターが無いのもありますが、これはつけておいた方
がいいと思います。水がエンジンに入るととんでもない目にあいます。費用がかかります。

エンジンについては、詳しく知るのは大変ですが、少なくとも冷却水系統は知る必要があります。
船底から海水が入って、エンジンを冷却しますが、それにはウォーターポンプがあり、内部には
インペラというゴムのフィンをもった円筒形の物が入っています。ゴム製ですので、消耗品です。
ここにゴミなどがからんでフィンを破損する事もあります。必ずスペアーをもっておいた方が良い。
間接冷却の場合は自動車のラジエーターの水と同じで不凍液を入れます。この量も時折チェック
時々、エンジンの警報が鳴り、そして電話してくる方がおられますが、少なくとも、冷却水が出て
いたか、量は充分か、海水フィルターにつまりはないか、インペラが破損していないか、そういう事
を先にチェックすべきです。まあ、そういうチェックをすればたいていは電話して聞くような必要性は
かなり無くなるとは思いますが。

エンジンに関して、たまにある事は、普段あまりのっていない。乗っても長時間回さない。それでい
てメインテナンスもした事無い。エンジンは錆びだらけ。しかしながらエンジンはトラブル無し。こういう
事もある。でも、ちょっと長い時間回すとたいていトラブルが発生します。上記のような燃料系が多い、
それにベルトがかかっているプーリーが錆びている場合、ベルトが切れやすい。その他、オイルの量
交換、フィルター交換、そしてエンジンをいつもきれいにしておく。たまに回航などで長時間乗る事が
ありますが、たいていのトラブルは冷却水、燃料系、ベルト、これらが殆どです。

ついでながら、バッテリーを充電する為に長時間に渡ってエンジンを回しておく場合がありますが、
アイドリング回転程度で長く回すと内部にカーボンが溜まる。しかもアイドリング回転ではエンジンは
不安定でエンジンが振動する。ちょっと回転を上げて、安定する回転にして、時々吹かして、カーボン
を吹き飛ばす。また、エンジンオイルを循環させるという意味でのエンジン始動ならば、5分も回して
おけばOKです。

最後にスタンチューブですが、コットンにグリスを染み込ませたグランドパッキンがありますが、テフロン
製があります。これはスタンチューブを締めて、全く水漏れが無い程度まで締めても大丈夫です。
但し、シャフトが手で回して回る程度でなければいけませんが、それ程締めなくても水漏れはしない。
これでビルジはいつもドライにできる。水漏れが多いとビルジポンプがあるとはいえ、海水を回りに
ぶちまける事になる。そのままにしておきますと、あっちこっち錆びてきます。エンジンもエンジンルーム
もいつもクリーンに保つのが原則です。という事は点検しやすい構造でなければいけません。これがし
にくいと人間は面倒がって、点検をしなくなる。スタンチューブにPSSというのがありますが、あれはなか
なか良いと思いますね。水漏れが全く無い。調整も不要。優れものだと思います。

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