第七十九話 割りきり

極端な例かもしれませんが、割りきってしまうと、とてもきがるに、楽に、セーリングを楽しめる
と思います。例えば、キャビンは狭い、シンプルで必要最低限しかない。日常はセーリングを
どんどん楽しんで、デイセーリングに徹する。そして、年に1回、とまりでどこかに行く。そんな
時でも、ヨットに泊まらなくても良い。旅館に入って、温泉に浸かって、その料理を楽しみ、酒飲ん
で、ぬくぬくと厚いふとんにくるまって寝る。そして、次の日、またセーリングに出て、次の港を
目指す。そう割りきれば、ヨットにはたいした物は要らなくなる。

ヨットの中で料理を作ると後片付けは大変だ。それなら、せいぜいカップラーメンやコーヒーを
いれる為にお湯を沸かす程度の設備で充分。キャビンも広くなくても、座って、寝転んでそうい
うスペースがあれば十分。キャビンの照明だって、無いならない無いでも替わりはいくらでもある。
そうやて割りきってしまえば、心配事も減少し、セーリングにより気軽に集中できる。遠出だって、
旅館やホテルの方が快適だ。真夏にはエアコン付きの涼しい部屋でぐっすり寝れるし、冬は暖か
い。こんな良い事無いでしょう。

それなのに、何でもかんでも装備して、どういう場合でも快適にヨットで過ごせるようにと考えてし
まうのか。土台、陸上生活にはかなわないのですから、逆にキャンプ気分を味わいたいなら、余計
な物は要らないし、結局、本当にロングクルージングに行くか、ヨットに住まない限りは、要らない
物ばかり。割りきってしまえば、こんなに気軽なのです。

こんな気軽に割りきったオーナーは、きっと最高に楽しめます。マリーナに着たら、せいぜい10分
以内にヨットが出せる。すいすい縦横無尽にセーリングを堪能して、帰ってきたら、10分以内に
片付けて、まあ、コーヒーでも飲んで余韻を楽しみ、帰る。その日のセーリングが最高だったら、
帰る道程でも感覚が残る。或いは、この時はこうやた方が良かったかもしれない。そんな事を考え
るかもしれない。それなら次の時には、そうやってみよう。また、或いは、どうやって一人でジェネカ
ーを上げてジャイブしようか?頭の中で想像してシュミレーションをやる。こういう風にしたら、でき
ないか。収納する時はどうしようか。そういう段取りや装備を考える。そして、実行に移して、いろい
ろやりながら、自分のやり方で、完成する。そして得たセーリングは、また次のステップへ進み、
どんどん先へ進みます。これが面白い。ダウンウィンドの走りをシングルで感じる。こんな緊張感と
弛緩を繰り返し、こんなのは数時間で充分、それ以上は続かない。充分疲れて、充分楽しめる。
ピクニックセーリングはゲストが居る時かロングの場合。もちろん。ゲストにもスポーツとして味わって
もらって良い。

デッキカバー? そんなもの付けたりはずした、面倒くさい。デッキは洗えば良い。とにかく、さっと出
れて、帰ってきてもさっと片付けられる。そしてお茶でも楽しんで、帰りましょう。まあ、マリーナから
遠いところに住んである方はこう気軽ではおれないでしょうが、でもできるだけ気軽になれるよう工夫
して頂きたいと思います。手間はできるだけセーリングにとっておく。その外はできおるだけ手間の掛
からないようにしておく。ちょっとのくつろぎはキャビンで、本当につろぐ時は旅館や自宅で、そう割りき
ってみませんか。きっと、面白くなります。

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