第七十話 回航

回航はだいたいプロの回航屋さんに御願いする事が多いのですが、今回はオーナーと一緒に
回航をしました。ヨットでは無く、ボートです。行程、約160マイルですが、ボートでしたので、
約7時間という、勝負の早い回航でしたので行った次第です。

今回の回航では船齢が古く、それで約6時間ぐらい走った所で、エンジンの回転が走っていて
少しづつ落ちてくる。それで、低回転で5〜10分ほど走り続け、再びスロットルを上げると何事
も無かったかのように走る。でも、しばらすくするとまた下がる。こういう症状はヨットでもあります。
通常、オーナーがあまり連続して長時間エンジンを回す事が無い場合は、こういう症状は出ない
のですが、10時間とか20時間とか回すと、同じような症状になる事が多い。

今回のボートの回航前に燃料フィルターは交換していたのですが、それでも駄目でした。こういう
症状はしまいにはエンジン停止になる事が多いです。原因は燃料タンクの汚れ。タンク内にヘドロ
のような物質が溜まっている。古い軽油のせいだと思います。車のようにしょっちゅう載って、新しい
軽油に入れかえられれば、そうはならないと思いますが、ヨット、ボートの場合は古い軽油が残る。

そのヘドロ状の物がフィルターを目詰まりさせ、燃料の行く量が減って、エンジン回転が上がらない
ようになる。フィルターの交換が必要です。緊急ならフィルターを軽油で洗っても良い。根本的には
燃料タンクの古い燃料を抜き、きれいな燃料を入れる。また抜く、こうやって、ヘドロ状の物を抜いて
洗う必要があります。抜いてみると、結構ごみがたまっている事も多く、場合によてはFRPの繊維が
出て来たりもする。これなど、造船中、タンクにごみが入ったのでしょう。ある造船所のボートでは、
新艇時にも同じ事がありました。タンクの中はFRPのカスが一杯でてきた。製造環境の問題でしょう。
ヨットはまだ良いです。セールがありますから、でもボートでは大変です。

回航をしますと、こういうケースは珍しくはありません。古いヨットにお乗りの方、できれば1度、タンク
を掃除される事をお奨めします。ところが、燃料タンクをクリーニングするに、手の届かない所にあったり
上部に何かが設置してあったり、それにタンクは時化た時にタンク内の燃料が暴れるので、内部には
仕切りがあります。下部だけが繋がっている。それで、クリーニングもなかなか難しいのですが、根気
良くやるしかありません。

燃料フィルターが詰まって、エンジンが停止すると、吸引の力でホースのジョイント部分からエアーを
吸い込む場合があります。この場合はエアー抜きをしないと再びエンジンはかからない。水分離器を
備えているヨットは、これもチェック。大抵はこちらの方が詰まっている。機械物というのは、本当にいつも
動かしておかないといけませんね。

次へ        目次へ