第八十四話 居住性

ヨットの選択において居住性というのが重視される方は多い。居住性はキャビンが広いか
どうかという事が重要視されますが、乗り心地という事もある。居住ですから、読んで字の
如く、居住することですから、居住するなら広い方が快適です。ただ、広くする為に幅を取り
船底がフラットになってくると、波にバンバン叩かれるし、それに軽くても頑丈なら良いので
すが、そうでもなければその衝撃は大きい。

日本の場合、居住する方はあまりおられない。実際、週末さえも船に泊まる方は少ない。
そういう事を考えると、居住性というのはあまり重要視すべき事では無いように思えます。
広いキャビンは、その反対側にマイナス面を持っています。つまり、あまり居住しない方が
広いキャビンを持って、マイナス面と比べて、メリットはあまり無いと思うのです。居住性は
居住する方にとっては、マイナス面を差し引いてもメリットがある場合は良いのですが、そう
では無い方にとってマイナス面の方が大きくなる。

大きな船体はそれなりに構造をしっかり造らないと船体のねじれが大きくなる。ねじれると
いろんな部位のシーリングが切れたりするかもしれない。という事は水漏れの原因も考え
られる。船底がフラットになると海面に叩きやすい。大きなキャビンはトップヘビーになる。
風圧面積が大きいと風に流されやすい。そういう事をかんがえると、サイズに対して大きな
キャビンというのは考え物です。

それ程大きなキャビンでは無くても、どのヨットでもキャビンはそこそこあって、居住しないのな
ら充分ではないかと思うのです。重心が低くなる。波に叩きにくい。叩いてもソフトな乗り心地
そういう面のメリットの方が重要視されるべきではないかと思います。居住するどころか、いろ
んな設備があっても、使っていないケースが多い。でも、あればメインテナンスしてやらないと
錆びが飛び散っていたり、それがトラブルの元となる。

1DKより2DK,2DKより3DKの方が住むには快適である。便利な電化製品がたくさんあれ
ば快適な生活がおくれる事は間違い無い。それと同じ発想でヨットを考えるなら、ヨットに住む
べきでしょう。それにヨットは家とは違って、動くものです。動くのが主体か、停泊して居住する
のが主体か、そういう事になる。その両方を取るなら、サイズを長くする。そういう方が健全で
はないかと思います。

まあ、どんなヨットにしろ、いろんな考え方がありますので、皆さんがそれで楽しんで、おおいに
使ってあるなら、文句は無いのですが、使ってない方が多いのですから、それなら、考え方を
ちょっとあらためて、本当に使う使い方において、メリット、デメリットを考えないと、せっかくの
ヨットが泣いてしまう。どれが良いとか悪いというより、それぞれのヨットと自分の使い方が合って
いないと、使いづらいものになってしまう。使いづらいヨットは、乗らなくなる。

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