第九十三話 エンジン

ヨットは風で走るとはいえ、今やエンジンの重要性は大です。マリーナからの出入り
からロングクルージングにおいては、殆どがエンジンを使うというのが一般的です。

エンジンには直接冷却と間接冷却があり、前者は海水がエンジンを冷却し、後者
はエンジンに清水(実際はクーラント)を持っているため、海水で清水を冷やし、清水
がエンジンを冷やしている。この場合、この清水を温水器に回して循環させれば、温水
を得る事ができる。輸入艇の場合は殆どがこの間接冷却になっています。

冷却水は船底からインペラの入ったポンプでくみ上げ、冷却後船外に排水されます。
時々あるのがこのインペラの破損。新品でも破損する事もあるので、必ずスペアーを
持っていた方が良いでしょう。異物を吸い込んだり、もちろん古くなったりして破損する。
この異物を吸い込まないように、フィルターがある。時々、このフィルターに小魚が詰まる
事もあるので、エンジンをかけた時は必ず冷却水を確認し、いつもより少ない時は、まずは
フィルターを点検してみる。この場合、バルブは閉める。当然です。船底が汚れている場合
冷却水の取り入れ口がふさがれる事もある。この冷却水は冷却後、排気ガスとまざって、
排出されます。一度、そのラインを確認しておくのも必要かと思います。知れば、トラブル時
に対応できるようになります。オイルフィルター、燃料フィルター、燃料と水のセパレーター、
いくらエンジンがわからないとは言っても、こういう物の位置、配管等は確認しておく方が
良い。

エンジンルームに水漏れやオイル漏れ、そういう物がある時、できるだけ早く発見して、初期
段階での対応をしておく必要がある。そうすれば、大きな出費は避けられます。その為には
知る事とエンジンルームを常にきれいにしておく事が肝要。できるだけエンジンを錆びさせな
いように。

スタンチューブからの水漏れによって、これがエンジンを錆びさせるという事もあります。最近
はPSSという海水が漏れないスタンチューブがありますので、これなどは良いと思います。
従来のスタンチューブでも、中身をテフロン製のパッキンを入れると、海水が漏らない程度
まで締めても焼きつかないので、これも良い。但し、シャフトは手で回して回る程度でなければ
なりません。

エンジンの設置の高さはが高いヨットはそう無いと思いますので、以前書きました海水冷却の
ラインにエアーベントがあった方が良いと思います。これはエンジン稼動時は弁が閉まり、
エンジン停止時、弁が開き、そこからエアーが入ります。それによって、サイフォン現象による
冷却水の逆流を防ぐものです。

ついでながらプロペラについて、ヨットはセーリングするものですから、プロペラがでかいと
セーリング時に抵抗になります。機走では速いがセーリングではかなり遅いというのも困ります。
水は空気の800倍の密度がありますので、これは大きな抵抗です。そこで、フォールディングや
フェザリングペラというのがある。値段は高いですが、エンジンもフル活動し、帆走にも妨げに
ならないという点ではお奨めです。

帆走中はプロペラが水流で回ります。これはギヤを傷める可能性があるので、ギヤをバックに
入れる。するとペラは停止、でも大きな抵抗になるのです。造船所ではこれを避ける為か、小さめ
のペラがついてくる場合がある。新艇でついてくるのが必ずしもピッタリとは行きません。

まあ、フィルター類とオイルの交換を定期的にして、エンジンをきれいにみがいておく。ついでに、
ベルトの張り具合をみておく。普段はこれで良いと思います。

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