第三十八話 デイセーリングを演出するC

ヨットに乗るといのは面倒な事なんです。面倒くさい事をするのがヨットなんです。
その面倒くさい事と解っていながら、最初はそれが面白かったのに、だんだんと
慣れてくると、面倒くさいのが嫌になってくる。それでたまにしか乗らなくなる。
そういう面倒な事を最初は覚えようと思って意欲満々ですから面倒とは思わなか
ったのですが、なれてくると面倒になる。それは向上心が薄れてきたせいではな
いかと思うのです。もっとうまくなろうと思えば、面倒くさいとは思わない。ヨットが
変わったのでは無く、あなたが変わってしまったのではないでしょうか。

ですから、常にうまくなろうという向上心をキープできるかどうかが、ヨットを長く
楽しめるかどうかのコツです。キャビンが大きいかどうか、エアコンがあるかどう
かでは無いと思います。向上心をキープするには、うまくなろうという意識が必要
ですが、うまくなったらどんな風に面白くなるんだろうか、それが描けないと、うまく
なろうという気にならない。レースならうまくなれば勝つという明確な褒美がもらえ
ますが、クルージング、スポーツセーリングでは表彰される事も何も無い。

楽器を始める中年男性は実に多い。私もその一人ですが、うまくなったら、あんな
曲、こんな曲、流暢に滑らかに弾いてみたいと思います。その動機がうまくなりたい
という意識を保持します。しかしながら、ヨット、うまくなったら何が良いのか?そこそ
こでも、クルージングはできるし、ちょっと遠出もできる。その他に何が良いの?てな
具合です。

その答えは自由自在になる事です。全てが調和できる事です。そうすると今まで感じ
た事に無いスムースさ、滑らかさ、そうやって走る事ができます。それはやってみる
までは誰にも解らない。しかし、のんびりクルージングとは違うもうひとつ上の感覚が
味わえるばかりか、完璧に調和したようなしびれるセーリングを堪能する機会が増
える。それに何が良いか? 結局は何を体験し、どんな感覚を得たかが、生きている
財産のような物で、グッドフィーリングを得るという事は財産をひとつ築いたようなもの
ではないかと思います。こればかりは、いくらお金積んでも、ヨットがそこにあるだけ
では味わえる事のできないものです。実際に実行し、積み上げてきたものだけが知る
世界です。ちょっとオーバーですかね。

でも、うまくなる人はそれで満足しません。もっと先を見つめています。ですから、100%
満足する事はないかしれません。そして全てが終わる時、それまで得てきた、感じてきた
物で総合評価を自分でする。面白い人生だったか、つまらない人生だったか。生まれて
きたからには、面白い人生を送りたい。誰でもそう思う。でも、それには自分が動かなけ
ればそうはならない。後で、もっとやっておけば良かったと思うのは遅いのです。始める
に遅いという事は無い。が、始めるのは今だと思います。

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