第七十話 小粋なヨット

ちょっと小粋なヨットに乗りましょう。サイズはちょっと小さめでも良い。ノルディック
フォークやアレリオンなんかがお奨めなんですが、遠くに行かずとも、自由自在
を目指して、スイスイセーリングをする自分の姿を想像してみてください。きっと、
もたもたしているでかいヨットを尻目に気軽に出て行く姿は実に格好良いと思い
ますねえ。

狭いキャビン、冷蔵庫も無い、温水も出ない、でもそこが粋なんです。セーリング
は充実しています。通を感じさせます。それを自由自在に乗りこなすところが粋
なんです。これからはヨット自慢の大きなヨットも良いけど、自由自在に粋に乗り
こなす時代になる。誰より速いとか、そういう事では無く、気軽に操って、スイスイ
走り回ってくる。

今の時代はヨットにいろんな物を装備していく時代です。便利な物はどんどんつけ
て行く時代です。冷蔵庫や温水はもちろん、電子レンジもあればエアコンまである
コクピットにいけば、広いコクピットにテーブルがあって、スプレー避けのドジャー
に日差し避けのビミニトップ、後部にはオーナーズチェアー、みんなそれなりに便利
な物ばかりです。でも、あえて言いますと、そんな物無い方が気楽なのです。あれば
便利かもしれませんが、メインテナンスの事もあるし、ドジャーがあれば前が見えに
くい、ビミニトップがあれば格好悪い。コクピットにテーブルがあれば邪魔に鳴る。

そんな物が無ければ、無いなりに、その日必要な物をコンビニで買って、冷たい飲み
物は小さなアイスボックスひとつ下げて、さっと出る。縦横無尽にセーリングして、スプ
レーを浴びる事もあるでしょう、でもそれも心地良いセーリングのひとつです。夏の日
差しの強い時は夕方から出る。何も無いから気軽です。気軽になれれば純粋にセー
リングを堪能できる。そこが粋で格好良い時代になると思いますね。

実際、私にも経験があります。そのヨットはフル装備で、冷蔵庫はもちろん、温水も
エアコンも全てありました。でも、全く使わなかった。いつも、コンビニ弁当とビールを
小さなビニールのアイスボックスに入れて、セーリングに出てました。ヨットの中には
余分な物は一切なかったので、実にすっきりしていてきれいでした。恐らく、そのマリー
なの中で出航回数はダントツだったと思います。気楽だからできた事だと思います。
それに快走を楽しんでました。

ですから、多くの方々にも、こういう気軽なセーリングをお奨めしているわけです。余計
な物は何も無い、それで良い、それが粋です。そして小奇麗なヨットで、スイスイ走る。
こういうスタイルはいかがですか?

ヨットだけが全てでは無いんです。ヨットは人生を楽しむいくつかのひとつ。他にもする
事はある。映画を見に行く、ボーリングする。テニスする。温泉に行く、いろいろあります
ヨットは気軽な遊びのひとつ。装備をヘビーにすると、気持ちもヘビーになる。何にも
無ければ、ヨットはすっきりするし、自分もすっきりできる。気軽が一番なのです。

それで、たまにヨットの世話をしてあげます。きれいに掃除してあげます。部分的にたっ
ぷりニス塗装してやるのも良い。見栄えが全く違います。手入れがたいへんだからニス
塗りはやめろという人が居ます。でも、部分的に少しやるだけでも見栄えが実に良くなる
1年に1回ぐらい、自分でやる。普段、気軽にスイスイセーリングしている人にとっては、
これも楽しい作業です。シートの痛み具合を見て、必要なら自分で換える。こうやって自
分でやれるのは、ヨットに気軽に接しているからです。そうしていると、自分のヨットが
実に良く解る。そうすればもっとヨットに対して気軽になれる。そうするともっと自由自在
になる。人馬一体という言葉がありますが、人艇一体です。これ以上カッコイイ人が居る
でしょうか?

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